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文字数 1,432文字
ロージアの門を出て、馬を出せば日の位置も
さほど変わらないであろう程の距離に、
件の塔は建っていた。
10階分ほどの高さの塔を観察しつつ、
脇道の茂みに伏せながら、
カノンは思案していた。
この塔にどう侵入するか、
そして、もうひとつ――
…………。
いてっ!?
カノンが手元に落ちていた石ころを
茂みに投げこむと、
昨日路地で出会った少年が、
頭をさすりながら姿を現した。
少年は銀貨をカノンから受け取ると、
にやりと笑みを浮かべながら、懐にしまいこんだ。
カノンに腕を引っ張られ、
言われたとおりに少年は茂みへ体を伏せる。
すると程なくして、一台の馬車が塔の前までやって来ると、荷台から複数の人影が立ち上がった。
その人影は、少し前にカノンがこらしめた追いはぎ達だった。
一人が御者となにやら口論をしているようだったが、それが収まると、手に縄をつけられたまま、ぞろぞろと開かれた塔の中へと入っていく。
彼らが塔へ入ったことを確認すると、
御者は馬車と共に、塔を後にしていった。