17-2
文字数 1,060文字
<地下牢>
目が慣れ始めた闇の中、
カノンは格子の向こうを見つめながら
脱出のために頭を巡らせていた。
頭をおさえたまま、
延々と一人で空虚へ向かって
言葉を発し続けるイーリアスを、
カノンは不安げに伺っていた。
噛まれるのも構わず、
カノンはすかさず相手の口内へ
血濡れた指先を突っ込んだ。
咄嗟に自傷した指の傷に眉をひそめながら、
気を紛らすように言葉を発する。
観念したのか、指先から
流れているだろう血潮を舌で掬い始める。
やはり先ほどまでの錯乱状態は、
魔力が不足していたことが原因だったのだ。
それが分かっただけでも、カノンは少し安心した。
安堵したのも束の間、
傷口に先程までとは異なる痛みが走る。
その動作は"血を得る"ためのものではなく、
"傷を抉る"ものだった。
魔力供給は指先よりも
首のほうがいいって、
こいつは言ってなかったか?
顔を伏せたままの
イーリアスの表情を知ることはできない。
しかし、普段とは異なる
妙に語調の強い彼の言葉に、
カノンは嫌な予感が全身を駆け巡った。
言うが否か、紅き瞳は
カノンの首元へ喰らいかかった――――