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文字数 2,252文字
炎が起こした爆発によって
爆風が吹き荒れる中、
ネイトは高らかに声をあげ始めた。
眼前を腕で覆いながら、
爆発した地点へと言葉を投げかける。
そして、焼却されたであろう
かつての人影を見るために、
男は煙の中へ目を凝らす。
爆発した地点へと言葉を投げかける。
そして、焼却されたであろう
かつての人影を見るために、
男は煙の中へ目を凝らす。
そこには、先ほどまで纏っていなかったはずの
白の衣をなびかせながら、
依然として佇むカノンの姿があった。
呆けている間に、男は
カノンに一太刀浴びせられていた。
急速に体外へ流れ始める血によって、
身体の制御が聞かなくなったネイトは、
膝から崩れ落ちた。
カノンに一太刀浴びせられていた。
急速に体外へ流れ始める血によって、
身体の制御が聞かなくなったネイトは、
膝から崩れ落ちた。
床に伏したネイトを見下ろしながら、
剣の血を払い落とす。
剣の血を払い落とす。
しゃがみこんでネイトの首から
ペンダントを外して懐にしまう。
炎の残る部屋を尻目に
動けないままのユーリを見ると、
カノンは彼を肩へと担いだ。
ペンダントを外して懐にしまう。
炎の残る部屋を尻目に
動けないままのユーリを見ると、
カノンは彼を肩へと担いだ。
肩をぐるぐると回しながら、
部屋を後にするつもりか、
カノンは歩みを進める。
部屋を後にするつもりか、
カノンは歩みを進める。
ユーリが言葉を理解できないまま
素っ頓狂な返事をしているうちに、
カノンは爆発でがら空きになった窓へと走り出していた。
そして、気が付けば
ユーリは抱えられたまま宙にいた。
声にならない声をあげながら、
内臓がひっくり返るような
奇妙な感覚を味わい、
眼前に近づく花園を凝視する。
内臓がひっくり返るような
奇妙な感覚を味わい、
眼前に近づく花園を凝視する。
地に落ちる寸前、不可視の風の塊が、
ふんわりと二人を受け止める。
それも束の間、形を崩した突風は
花びらを舞わせながら両者を転げさせた。
既に屋敷から脱出していたのか、
レイモンドが二人の下へ駆けてくると、
動きに精彩を欠いているユーリへ肩を貸した。
興奮した馬をいなしながら、
3人は馬車に乗り込み、
燃え盛る屋敷を尻目に馬を走らせる。
屋敷から離れ、開けた敷地から段々と
木々が増えて視界が悪くなっていく中、
カノンは炎が庭へと燃え広がっていくのを
確認して、目をそらした。
木々が増えて視界が悪くなっていく中、
カノンは炎が庭へと燃え広がっていくのを
確認して、目をそらした。
***
<数日後、ライザー邸跡 敷地内>
かつての邸宅の面影もなく、
黒の残骸と成り果てたものが転がる地で、
男たちは煤けた瓦礫をかき分け、
各々の作業に追われていた。
ユーリは考えあぐねる様子で、
視線を再び地に落とす。
次に続く言葉を発するまで、暫しの間があった。
間を取るために再び作業に取り掛かろうとする
ユーリをレイモンドが諫める。
呑気な一幕に、その場にいる騎士たちから、
自然と笑い声があがった。
一時の平和を祝福するように、
敷地内に置かれた手向けの花が、
風に揺られていた。
<リーン邸 応接室>
窓を通して眺めていた中庭から視線を外し、
カノンは逡巡してから口を開いた。
カノンの頭を一撫でして、
フィリカが側を離れた後も、
カノンは風にそよぐ花々を見つめていた。