22-3

文字数 1,709文字

えい、やあ、とぉ~~っ!
オラオラどうしたぁ!
防戦一方じゃジリ貧だぜぇ?!
くっ、
ディーンは2人の剣と斧による斬撃、そして弓矢による牽制から逃れ、ステージ上にそびえる柱を陰にして身を隠した。


ねぇねぇあにき、
おれたちもしかして
押せてるんじゃないかな?!
あぁ、その通りだぜオーギ。
これが数の力ってやつだ!
…………。
(うーむ、一人ひとりの戦闘力に
突出したものはないが、
連携の取り方が抜群にうまい!
厄介だな……。)
(接近戦担当の二人から
少し間合いを取るだけじゃ、
間髪入れず片目くんの矢が飛んでくる。
そして意外に一撃が重いのは、
ガタイがいい方じゃなくて
のんびりしている方の子ときたもんだ。)
…………。

何か方針を定めたのか、得物のハルバードを手に提げたままディーンは柱から姿を現す。

対戦相手を一瞥し、頭をかきながら口を開いた。

えーと、ちょっと
聞きたいことがあるんだけど、いいかな?
なんだぁ? 
降参するってんなら喜んで聞くぜぇ。
俺の記憶違いでなければ、
この試合、勝者は
一人しか出ないはずなんだが……
君たちはこの先どうやって
戦っていくつもりなのかな。
『おーっと、ディーン選手!

マスク・ザ・トリオに

核心をつく問いかけだぁー!』

(そんなチーム名つけられてたんだ)
ハッ、敵の心配とは
余裕じゃあねぇか色男。
だがその心配は不要だ。
ウチのエースの力を見せてやるぜ!
りょうかーい!
!!
仲間の宣言にハキハキとした言葉を返すと、
少年はディーンめがけて突っ込んでいく。


言葉に反応して咄嗟に身をかわしたディーンの代わりに、大きく振り降ろされた剣はディーンの隠れていた柱へ命中したが、その柱には大きなヒビが入っていた。

おわぁ…………。
バッカ、返事したから
避けられちまっただろうが!
迂闊だぞ
ご、ごめん~。
吹き飛んできた柱の破片によって、擦りむいた頬に軽く触れる。

その威力が事実だと確かめるように、相手と柱とを見遣った。

……なるほど、
力に自信があるってことか。
そういうこった。
下手に相手して骨を折る前に
降参したほうが身のためだぜぇ
確かに、まともに喰らえば
ただじゃすまないだろうね。
…………。
会話していることをいいことに、
今度は宣言なしで少年はディーンへ再度突っ込んでいく。
(もらった!)
だが、
ぐぎゅッ
少年は紙一重で一撃をかわされ、
回転で勢いの付いたシャフト部分に
したたかに打ちつけられて倒れ伏した。
当たらなければ
どうってことはないのさ
なっ……、てめぇ!!

ガスト、よせ!!

来るか。

受けて立とう!

仲間がやられ、斧を構えて向かってくる男へディーンも向かっていく。

得物同士をぶつけ合った事を皮切りに、両者は打ち合いを始めた。

(くっ、こうなってしまうと
撃つことができない……!)
(どうする、短剣に

持ち替えて加勢するか?! 

いや、でも――)

背後もらうよ
なっ、
思考を巡らせている間に視線を地へ落としていたのだろう。

ディーンが背後に回っていたことに気が付いた時には身体がわずかに宙を舞い、叩きつけられた衝撃の後、青天井を仰いでいた。

ちくしょ……、
さっきまで流れは俺たちに来てたのに……!
君たちの動きは大方見切ったからね。

ましてやその仮面は、

視界を大いに制限するんだろう?

ケリをつけたさに粗が目立ってたよ。

……というわけで、今回は俺の勝ち!
『劣勢かと思われたディーン選手、

瞬く間に仮面の3人をのしてしまったぁー!!

ディーン選手の勝利です!!』

ディーンの勝利宣言に続いて

司会の宣言もなされ、会場から大きく歓声が上がる。
…………。

その様子を、前のめりになったまま眺めていたカノンは安堵したように笑みを浮かべてから、座席へ居直した。

ふー、一時はどうなるかと思ったけど、

さすが腕に自信があるって

言っただけあるわね。

……あぁ、そうだな。

……っと、そうだ!

あたしも準備しないと!!


今のところ変わった

動きはなさそうだけど、

引き続き頼んだわよ!

言うが否かカノンはすぐさま立ち上がり、イーリアスの返事を聞かずに足早に去っていった。

(行ったか……。)

(ディーンが商工会への呼びかけを

忘れていると言い逃したが……

カノンがすることを祈ろう)

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登場人物紹介

<カノン>


合理主義だがお人好しという なんとも損な性格をした剣士。
世の中諦めなければ 大体のことはなんとかなると思っている。

<イーリアス>


自身にかかっている呪いを解除する方法を求めて 放浪する暗殺者。
同時に、冷静沈着な魔術師で、周りに冷たい印象を与える。

<ニルス>


気が小さいが確かな腕を持つ魔巧師。
片付けが苦手だが、物の所在は全て把握している。

<セシル>


手先が器用なお調子者のトレジャーハンター。
アーティファクトや魔巧具の真贋を見抜く観察眼を持つ。

<フィラマリカ=D=リーン>

精霊のスクオーラのボス。
たおやかだが、何かと暴走しがち。

<パシュア>


腹の読めない隻眼の青年。
フィリカの世話役。

<ディーン>


人当たりがよく誠実な好青年。でもなぜか地味で目立たない。
女性を見たら話しかけずにはいられない性質の自称紳士。

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