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文字数 1,148文字
役目を終えたというように、
手に持った斧を地面へ突き立て、
ディーンは一つ息を吐く。
今しがた、自身の手で砕いたばかりの
碑石の残骸を見下ろしていた。
セシルが指さした上空を見ると、
空にヒビがはいっていた。
枝葉の如く広がる亀裂は、
それが球状に張り巡っていたことを示していた。
向き直って視線を送るディーンへ、
フランツは空を眺めたまま
言葉を返した。
フランツの手の甲へ大きな亀裂が走る。
そこを起点に、ぼろぼろと形が崩れていく。
いまだ原型を保った左手で、
首に下げたペンダントを握りしめた。
言葉を最後に、彼の破片は音もなく崩れる。
程なく風に運ばれ、見えなくなった。
茂みから広場を目視し
二人の人影を捉えると、
一目散に駆け出して行った。
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イーリアスを横たえさせると、
深呼吸をして空を仰ぐ。
そこには遺跡を探索する以前に広がっていた
雲ひとつない空が、カノンの瞳に映っていた。
確信を得たように言葉を漏らした
ディーンへ、二人は視線を向ける。
誰に言われるでもなく、
3人は木々に囲まれた更地を見渡す。
遭遇することのなかった村人も含め、
転がった石の数は、かつて此処で暮らしていた
人々を思わせるものだった。