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文字数 810文字
後ろを振り返り、
既に目の前に居たカノンをみて
仰天した少年は、思いっきり尻もちをついた。
一先ず落ち着けと言うように
カノンの肩にぽんと手を置く。
そして自分に任せろというように
視線を送ってから、片膝をついて屈み込み、
少年と目線を同じくした。
少年からは堰を切ったように
言葉が流れ出していたが、
ふと我に返ったように、
カノンたちへと顔を向ける。
言葉の勢いに乗り、
直ぐ様立ち上がって
少年はまた走り去ろうとする。
しかし今度は、その首根っこを
カノンが掴んでいた。
単純に、少年に対する哀れみだけで
放った言葉ではないと感じたカノンは、
ディーンの言葉を聞き入れ、
掴んでいた手をはなした。
自由の身になった少年は
一度だけ振り返ってから、
彼の言った村のある方向だろうか、
迷い無く森の奥へと一直線に走って行った。
その様をカノンは歯がゆい思いで見送る。
少年の姿に、今は姿を消したセシルを重ねながら。