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文字数 1,234文字
<闘技場1F 廊下>
前方に長槍を携えた守衛を捉えると、
壁に身を寄せて様子をうかがい始める。
<中背の守衛>
…………。
守衛は扉の脇に立ち、人気のない廊下で
一点を見つめて厳かに佇んでいる。
おおよそ怠惰とは程遠い性質であると
セシルは判断した。
遠目から観察しながら、
勝手にも己の都合を胸の内で呟く。
すると、セシルとは反対側から来客があったのか、守衛は声をあげ始めた。
<中背の守衛>
ちょっときみ!
ここから先は立ち入り禁止だぞ!
試合は上の観客席で――
明らかに言葉の途中に思えた守衛の声が
不自然にぴたりと止む。
不審に思ったセシルが守衛の下へ駆けつけると、
守衛は頬の筋肉を張ったまま口を開け、
瞼を閉じて静止していた。
音もなく扉を開けて部屋の中へ侵入すると、
開けた空間に戸棚が並んでいる。
そしてそこには、セシルに背を向けるようにして
一人の少年が棚を物色していた。
右肩に手を置かれ、少年は
肩を大きく震わせながら振り返ると、
置かれたままの手の人差し指が、
柔らかな頬をぐいと押し上げた。
冷たい視線を向けたままの少年をよそに、
セシルは得意げに言葉を続ける。
指を差しながら牽制し、
セシルも同様に別の戸棚を調査し始めた。