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文字数 1,878文字
<その頃、ロージア 宿屋の食堂にて>
カノンたちは旅路で疲労した
足を休めるべく、
宿屋へと足を運んでいた。
言いながら、セシルが
指差した方向へ視線を移すと、
店内隅のテーブル席に、何時しか見た
青髪の青年が腰かけていた。
イーリアスに説明をしながら、
カノンは冷や汗を流す。
自身の推測が正しければ、
恐らくディーンは……
そんなカノンの懸念は露知らず、
セシルはディーンのいる
横の席へさっさと腰掛け、
親しげに声をかけに行っていた。
カノンもセシルにならって
同じテーブルに腰かける。
しかしぬるいエールを片手に
対面でしみじみと自身の状況を語る
ディーンをよそに、
カノンは固まっていた。
直接的な原因でなくとも、
カノンの救援に応じたことで、
ディーンは職を失ったのだ。
それを全く気にかけないほど、
カノンは図太い性格ではなかった。
セシルの冗談をかわしつつ、
ディーンはイーリアスへ
視線を移す。
隣に座るイーリアスと、ディーンの横で
肩肘をつきながら話を聞いていた
セシルに目配せをする。
どちらも"わかっていた"とでも言うように、
別段驚いた様子もなく、普段通りに言葉を返した。
給仕に各々希望を伝えると、
程なくして、3つの木製のコップが
中身を伴って運ばれてきた。
3人の視線を受けながら、
それらしく咳払いを一つすると、
皆が飲み物を手に持ったことを確認すると、
自身も器を掲げた。
〈一行〉
乾杯!