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文字数 865文字
<ロージア 露店の並ぶ路地>
カノンは盗まれた魔巧具が転売された可能性も考えて、
路地にひらかれている 露店の魔巧具屋を巡っていた。
カノンはため息をつきながら、
別の魔巧具屋を廻るために その場を立ち去ろうとした。
<装飾の多い商人>
<装飾の多い商人>
<装飾の多い商人>
そうですよ。あなたです!
先程から魔巧具を見ているようですが、
魔術師の彼にでも プレゼントを探してるんですかい?
<装飾の多い商人>
いやいや!言わなくてもわかりますよ!
一般のお客さんは皆 魔術師に物を送る事を
後ろめたくお思いになられますが、
贈り物をする真心に邪も正もありません!
<装飾の多い商人>
こちらの純正の銀の指輪など如何でしょう?
指輪でしたら大きさが合わずとも
首から提げる事もできますし、
魔巧具としての効力も申し分ありませんとも!
こちらの話を聞かず、
べらべらと捲くし立てながら
強引に商品を手に持たせてくる魔巧具屋に、
時間が惜しいカノンは苛立ち始めた。
おいおい、そこまでにしとけよオッサン!
怒鳴りたてようとしたカノンの言葉は、
さらに大きな、それでいて
溌剌とした挑発によってかき消された。
<装飾の多い商人>
な、なんだとこのガキ!
根拠も無いのに言いがかりは――
<装飾の多い商人>
何時の間にか
子どもの手に渡っていた銀の指輪は、
表面が削られ、黒ずんだ金属が露出していた。
商人は、最早閉口するしかなかった。
急に子どもに手を引っ張られたカノンはなすがまま、
子どもと共に路地を走り抜けていった。