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文字数 1,345文字
<闘技場へと続く街道にて>
太陽が最も高くなるよりも前の頃、
一輛の幌馬車が林道を抜ける。
窮屈な木々の世界から一変し、
地平の臨める視界へと移った。
男が視線を目的地から
進路へと戻した後も、
赤髪の青年は闘技場を見つめていた。
馬車の中の、さらに自身を収容した、
黒の鉄格子の中から。
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<闘技場 入り口付近>
賑やかな空気にあてられ、
辺りをキョロキョロと見回す。
一帯には出場者らしき剣士や、
観戦目当てであろう
商人や貴族など、
様々な人間が見受けられた。
容赦なく言葉をつきつける
イーリアスに苦笑しながら、
ディーンは辺りを見回す。
筋骨粒々な大男、眼光の鋭い剣士……
パッと目につく戦士だけでも、
一筋縄ではいかないことは、
目に見えて明らかであった。
胸部に手を当て、
高らかに宣言する
ディーンの勢いに気圧され、
カノンは思わず首を縦に振った。
闘技場の受付へ向かっていく
仲間たちをよそに、
カノンはその反対へと足を向ける。
仲間たちの会話を横目に、
微笑みながらその場を後にすると、
闘技場の外れへ向かっていった。