2-3
文字数 609文字
カノンは昨夜の記憶が曖昧だった。
疲労のあまり悪夢を見ていたのだろう。
夢か――――
言葉に出す事でそれが現実であると安堵しようとしたが、カノンはふと、周りを見渡してしまった。
対岸ですやすやと寝息をたてて眠っている男を
寝床ごと蹴り飛ばしたくなる衝動に駆られたが、
頭の隅に残っていた理性がそれを抑え、
カノンは状況把握の為に頭を働かせる事にした。
寝床の脇に立てかけられていた愛剣へと目を移し、意を決して手に取った。
抜き身の刀身を振りかぶる――――
刃は男に届くことなく、
得物は床に音を立てて落ちていった。
膝をつき、痛む首筋を抑えながら、
カノンは起き上がった声の主を睨み上げる。