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文字数 1,028文字
飛び掛ってきた狼を
一太刀の下に切り伏せ、
カノンはイーリアスへ視線を移した。
どこからともなく顕現した鎌を携えると、
向かってきた狼へ、鎌を軸にして勢いをつけた蹴脚を一撃見舞わせる。
群れに一瞬動揺が走ったのを見て取り、すかさず柄を回転させて勢いづいた刃で、一体の頭を刈り取った。
イーリアスの一連の動作が
終わる一瞬の隙へ踊りかかった
狼の頭部を突くと、
カノンは地へ叩きつけてから
勢いよく剣を引き抜いた。
未だ起きる気配の無いセシルを
囲むように陣形を取る。
カノンは狼を見据え、切っ先の向こうへ
集中を尖らせ続けていた。
同胞が数体やられても尚、
獣達の眼は火の光を受けて、
闇の中で煌煌と光らせていた。
姿勢を低くすると、
戦闘で火照っていたにも関わらず、
突然、寒気がカノンの身体へ走る。
異変に気がついたときには、
狼達へ闇が纏わりつき、自由を奪っていた。
イーリアスは構えていた鎌を
真一文字に閃かせると、
動きの取れない狼たちは、
たちまちその首を刈り取られていた。
ひゅーっ、お見事!
眠っていたと思われていた少年は、
にやにやしながら片肘を立てて
悠々と横臥していた。