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文字数 994文字
男の呼びかけでようやく、
どことなく視線が定まらない様子で、
イーリアスは血溜まりから顔を上げた。
もし何の手立ても見つからなければ、
ギエルが戻ってきたが最後、
真っ先に、拘束を解いた自身が
贄にされることはわかりきっていた。
男が考えあぐねていると、となりからスッと
現れた少年が、イーリアスの手足の拘束を解いていた。
血にまみれた顔を袖でごしごしと拭き取ると、
イーリアスは立ち上がる。
絶命した男の身につけていた 衣服を破いて拝借すると、
その辺に転がっていた 棒切れを拾って先端に巻きつけ、
壁の灯から火を移した。
男たちに構わずに、灯りを持って
歩いて行くイーリアスを追う男を、
少年は暗がりで躓きながらもついていった。