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文字数 862文字
イーリアスは荷物袋から、緑色の、
沼のような液体が詰められた、細長い小瓶を取り出した。
鼻をつきぬけるような刺激臭と青臭さ、
その他形容しがたいものが交ざった悪臭がする。
普通の人間なら真っ先に廃棄するべき物体の臭いだ。
カノンはそう思った。
臭いが悪くとも、もしかしたら味はマシかもしれない。
そんな淡い望みはあっさりと消えていった。
今すぐこの悪辣なヘドロ吐き出してしまいたかったが、宿を上がった記憶が無い為に吐き捨てるべき場所の所在もわからず、彼女の良心が宿の人間に迷惑をかけることを躊躇った。
故に文字通り涙を呑んで、カノンは舌触りも最悪だった物体を呑み込んだ。