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文字数 1,167文字
<ロージア 正門入り口付近>
やや不満げに、セシルは
外そうと手をかけていた
フードから手を離した。
<顎髭を蓄えた男>
おい、なにぼさっと
突っ立ってんだ!
道を開けろ坊主ども!
慌てて脇にそれて道を開けると、
蹄が小気味良く音をたてながら、
馬車は通りすぎていった。
<旅の装いをした青年>
なんだ、あんた達は
知らないのか。
<旅の装いをした青年>
闘技大会だよ、闘技大会!
ロージアから西へ行ったところに
闘技場があるんだが、
もうすぐ大会が開かれるんだ。
その興行準備で、
商人や見物客がこぞってロージアを
中継してやって来るわけだな。
<旅の装いをした青年>
ま、かくいう俺も、
大会目当てで
ロージアに来た口だからなー。
てなわけで、おのぼりさんを
狙ったスリには気を付けろよ!
親切に闘技大会について
説明してくれた青年へ、
ぎこちない笑みを浮かべながら
去っていく背中を見送った。
賑やかな街の喧騒を尻目に、
一行はニルスの家のある路地へと
足を踏み入れていった。