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文字数 1,183文字
不意を突く事に精通している暗殺者が、
不覚にも不意を突かれたのなら、
効果が常識の外である、ニルスの魔巧具が
関わっている可能性がある。カノンはそう考えていた。
つい最近に、イーリアスに負かされたことを
思い出して内心自嘲しつつ、
カノンはニルスに笑ってみせた。
なにやら口ごもっているニルスを尻目に、
情報を得たカノンは、慌しく走り去っていった。
机に目を移すと、見覚えのない皮袋が置かれていた。
忘れ物かと思い、不躾だと思いながら中身を確認すると、
そこには、金貨をはじめとした硬貨が詰まっていた。
一つずつ取り出して確認すると、
それは今回の取引で、
本来自らの手で手渡すはずであった、
魔巧具の報酬の金額だった。
等価交換は商売、取引の基本である。
手ぶらでカノンが帰れば、
カノンが咎めを受けるのは想像に難くなかった。
ニルスは報酬を持って、
自身も成すべきことの為に、家を後にするのだった。