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文字数 1,841文字
<騎士団詰所>
一台の長机と4脚の椅子、
そして大き目のチェスト以外
めぼしいものがない小さな空間で、
騎士の青年は扉横から
座して窓の外へと見遣るカノンを注視していた。
そして大き目のチェスト以外
めぼしいものがない小さな空間で、
騎士の青年は扉横から
座して窓の外へと見遣るカノンを注視していた。
鋭い視線と棘の含んだ語調で釘をさされ、
青年はカノンから視線を外す。
沈黙が再び場を支配したが、
騎士の男が扉を開いた音でそれは破られた。
男は青年に目配せすると、
合図を受け取った青年は
人相書きをテーブルに広げた。
合図を受け取った青年は
人相書きをテーブルに広げた。
彼はネイト=ライザー。魔術師です。
この町の外れにある、彼の別荘で暮らしています。
我々にこの町の騎士団より
救援要請が入ったのは2週間前。
一か月前までは、父親との不仲から
館に引きこもりがちなこと以外、
別段悪い噂はなかったようです。
むしろ、この町にふさわしい、
花を愛する人物だったとか。
カノンの言葉にうなずくと、
騎士の男は言葉を続ける。
騎士の男は言葉を続ける。
聞き手に徹していたカノンは、
話が終えたことを読み取ると、
大きく伸びをしてから男に向き直った。
カノンの言葉を受けて表情を明るくすると、
レイモンドは用意していた革袋を
カノンへと手渡した。
レイモンドから受け取った革袋を開け、
カノンは中身を確認する。
それを横から見ていたユーリは、
中に金貨があることに気が付くと、
声に出しそうになったところを
必死に押しとどめた。
というのも、一般的な労働者と比べれば、
給金がいいとされている騎士団でも、
金貨など、そうそう
お目にかかれるものではなかったからだ。
カノンは硬貨をしまいこむと、
席を立って小さく一礼してから
部屋を後にした。
彼女はそんなものを、
身に着けていなかったのに。
納得はできなかったが、
逡巡なく、まっすぐに見据えて
言い放たれた上司の言葉に、
青年はそれ以上、
疑問を口にすることはできなかった。
かつて共に、この事件を収束させようと
馳せ参じたかつての仲間の名を、
絞りだすのが精一杯だった。