16-4

文字数 679文字

<とある家屋、玄関先にて>
にいちゃん……

まだこんな所に居たのか、エン。

いい加減、碑石の見張りに

戻ったらどうだ?

…………、

少し冷静になったらどうだよ、

フランツにーちゃん。

何?

だってそうだろ?

こんなに雨が降ってるってのに、

今日明日であいつらを

焼き殺すなんて……できるわけねーじゃん。

…………そうか。

エンは知らないんだったな。

え?

だが、それを

お前が知る必要はない。

いいから碑石の見張りに戻るんだ。

な、なんだよ!

はぐらかそうとしたって――――

行け!!
…………、

この状態の相手に何を問いかけても無駄だ。

賢明な判断を下した少年は、

渋々 目的の場所へ向かって走っていった。

(……そろそろ村のみんなが

 戻ってくるころだ。

 俺も準備を始めるか……。)


<そばかすのある青年>

フランツ!

! どうした。

巡回で何かあったのか!

<そばかすのある青年>

いや、それが……

捕まえたはずのガキが、

いつの間にか姿を消してて……

……チッ、

(あの女の仕業か。)

それならそれでいい。

既に捕らえた奴等だけで、

火刑の準備を行うぞ。


文字通り、逃がしたガキも

炙り出せるかもしれないからな。

<そばかすのある青年>

あ、あぁ。わかった。

指示を受けた青年は、

咎めがなかったことに安堵しながら、

その場を後にした。

(…………。)
(エルドリン……)

(命を守るべきはずの

 結界魔術で命を奪う俺を、

 お前は軽蔑するだろうな。


 でも……)

(すまない、エリン。

 俺はお前が思ってるほど、

 立派な人間じゃなかったんだ……。)

許しを請うように、

首からさげた縦長の石の

ペンダントを握りしめる。


石はただ、無機質な温度を青年の掌へ伝えていた。

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登場人物紹介

<カノン>


合理主義だがお人好しという なんとも損な性格をした剣士。
世の中諦めなければ 大体のことはなんとかなると思っている。

<イーリアス>


自身にかかっている呪いを解除する方法を求めて 放浪する暗殺者。
同時に、冷静沈着な魔術師で、周りに冷たい印象を与える。

<ニルス>


気が小さいが確かな腕を持つ魔巧師。
片付けが苦手だが、物の所在は全て把握している。

<セシル>


手先が器用なお調子者のトレジャーハンター。
アーティファクトや魔巧具の真贋を見抜く観察眼を持つ。

<フィラマリカ=D=リーン>

精霊のスクオーラのボス。
たおやかだが、何かと暴走しがち。

<パシュア>


腹の読めない隻眼の青年。
フィリカの世話役。

<ディーン>


人当たりがよく誠実な好青年。でもなぜか地味で目立たない。
女性を見たら話しかけずにはいられない性質の自称紳士。

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