第66話 桜、橘平と電話する
文字数 1,157文字
「ほんとすごいの!すごいすごい!」
『え?え?』
「すごいのよー!跳ね返しちゃう感じ!」
『ちょ、ちょっと落ち着いて!何がすごいの?』
桜は昼間に優等生たちを撃退した八神の「お守り」について、橘平に報告すべく電話をかけていた。しかし、桜は興奮で具体的な説明ができず、橘平は困惑していた。
「あー、ごめん。だってすごいもん。バリアしてる感じ」
桜は制服のまま、畳に三角座りし、大きな丸いクッションを抱え込んだ。
彼女の部屋は8畳ほどの和室。小学校の頃から使う学習机や大き目の本棚が置いてあり、本棚の一角には黒猫やピンクのウサギ、トイプードルなどのコロンとした小さなぬいぐるみが飾ってある。一見、シンプルで片付いているように見えるが、他の荷物は押し入れに詰め込んでいる。
『バリア?』
「森の巨大なバケモノがさ、私たちを踏みつぶそうとしたじゃない?」
『したした』
「あれとおんなじことが起こったのよ」
放課後に起こった出来事を、桜は橘平に語った。彼女の話の最中、橘平は一言も発さずにじっくりと聞いていた。
『森のあれも、八神のお守りの効果だったってこと…なのかな』
「絶対そうだよ!」
『すごいんだな~お守り』
橘平の言葉は、あくまでも「八神のお守り」に対する感想だ。
桜はお守り自体というより、「…お守りっていうか、橘平さんの有術じゃないかな」。
がた、ぼと、っと何かが落ちてぶつかったような音が、スマホから聞こえてきた。
「橘平さん?どうしたの?」
『まじで?え、俺が超能力者ってこと?』
声の感じからすると、橘平は混乱しているようだった。
それも当然だろう。今まで平凡な環境で育ち、学校でも目立たない生徒として生きてきたのに、突然、超能力に目覚めたかもしれないのだ。
「お守り自体に効果があるならさ、私が描いても効果があると思うけど」
『あー、八神の人間が書かないと効果ないって聞いたな』
「そういうことよ。八神の人しか使えない有術なのよこれ」
『…そう、か…』橘平はゆっくりと『父さんやじいちゃんも使えるのかな…?』疑問を口にした。
「可能性はあるよね。でも、今それを聞いていいかどうか」
『そうなんだよなあ、まもりさんのことより聞きにくい。それに封印の事とか桜さんたちの事とかバレたくないし』
「ごめんね、橘平さん。気を使わせて…」
桜はクッションをぐっと掴む。
『こっちこそだよ!勝手に俺から首つっこんでるわけだからさ、ほんと、桜さんは気にしないでよ!!』
何を言っても、何をしても、橘平はどこまでも優しい。優しすぎて不安になるくらいだった。
「ありがとう、橘平さ」
「おねえちゃん」
桜が顔をあげると、横に妹が立っていた。
話に夢中で、部屋に誰かが入ってきたことに気が付かなかったのだ。
「つ、ばき…!」
橘平に何も言わず、桜は急いで通話を切った。
『え?え?』
「すごいのよー!跳ね返しちゃう感じ!」
『ちょ、ちょっと落ち着いて!何がすごいの?』
桜は昼間に優等生たちを撃退した八神の「お守り」について、橘平に報告すべく電話をかけていた。しかし、桜は興奮で具体的な説明ができず、橘平は困惑していた。
「あー、ごめん。だってすごいもん。バリアしてる感じ」
桜は制服のまま、畳に三角座りし、大きな丸いクッションを抱え込んだ。
彼女の部屋は8畳ほどの和室。小学校の頃から使う学習机や大き目の本棚が置いてあり、本棚の一角には黒猫やピンクのウサギ、トイプードルなどのコロンとした小さなぬいぐるみが飾ってある。一見、シンプルで片付いているように見えるが、他の荷物は押し入れに詰め込んでいる。
『バリア?』
「森の巨大なバケモノがさ、私たちを踏みつぶそうとしたじゃない?」
『したした』
「あれとおんなじことが起こったのよ」
放課後に起こった出来事を、桜は橘平に語った。彼女の話の最中、橘平は一言も発さずにじっくりと聞いていた。
『森のあれも、八神のお守りの効果だったってこと…なのかな』
「絶対そうだよ!」
『すごいんだな~お守り』
橘平の言葉は、あくまでも「八神のお守り」に対する感想だ。
桜はお守り自体というより、「…お守りっていうか、橘平さんの有術じゃないかな」。
がた、ぼと、っと何かが落ちてぶつかったような音が、スマホから聞こえてきた。
「橘平さん?どうしたの?」
『まじで?え、俺が超能力者ってこと?』
声の感じからすると、橘平は混乱しているようだった。
それも当然だろう。今まで平凡な環境で育ち、学校でも目立たない生徒として生きてきたのに、突然、超能力に目覚めたかもしれないのだ。
「お守り自体に効果があるならさ、私が描いても効果があると思うけど」
『あー、八神の人間が書かないと効果ないって聞いたな』
「そういうことよ。八神の人しか使えない有術なのよこれ」
『…そう、か…』橘平はゆっくりと『父さんやじいちゃんも使えるのかな…?』疑問を口にした。
「可能性はあるよね。でも、今それを聞いていいかどうか」
『そうなんだよなあ、まもりさんのことより聞きにくい。それに封印の事とか桜さんたちの事とかバレたくないし』
「ごめんね、橘平さん。気を使わせて…」
桜はクッションをぐっと掴む。
『こっちこそだよ!勝手に俺から首つっこんでるわけだからさ、ほんと、桜さんは気にしないでよ!!』
何を言っても、何をしても、橘平はどこまでも優しい。優しすぎて不安になるくらいだった。
「ありがとう、橘平さ」
「おねえちゃん」
桜が顔をあげると、横に妹が立っていた。
話に夢中で、部屋に誰かが入ってきたことに気が付かなかったのだ。
「つ、ばき…!」
橘平に何も言わず、桜は急いで通話を切った。