第40話 葵、9割扱いされる
文字数 1,531文字
それも一瞬のことで、
「このポンコツ!」
と桔梗から後頭部をはたかれた。葵と同じ能力を持ち、日本刀を振り回して妖物を駆除する彼女。もちろん同年代の女性よりも攻撃力は抜群に高い。
しかも部下で親戚、体力もある葵相手なので容赦ない。叩かれた場所はきっと、真っ赤、腫れている。
「棒読み!これじゃあ訓練にならないわよ、感情込めて!」
「できませんよ、役者じゃないんだから。な、んとも思ってないのに、感情込めるとか」
葵は叩かれた場所を右手で覆いながら反論した。
「少女漫画にでてくるような顔してるくせに。お勉強しかできないタイプね。こいつもクソだ。ねえ向日葵ちゃん?」
「あ…あ、ああ!ほんと、こいつポンコツ!これは流石に私でも騙されないよ。見た目だけだね~」
桔梗に合わせて葵をバカにする向日葵だが、実は心拍数も血圧も呼吸もすべて限界を超え、倒れてしまいそうだった。
葵も棒読みとはいえ、流石に恥ずかしい。しかし「何ともない」といった風に冷静さを装っていた。パワハラで訴えてやりたい。次に何か強要されたら人事に訴えてやろうと思うくらいだった。
桔梗は「心を込めて言いなさいよ、歴代彼女とのことを思い出して」また葵に言わせようとしたが、課長が戻って来た。
しかも、「ねえねえ、妖物出たよ!」感知しながら。
「桔梗ちゃん、ひまちゃんと」
「申し訳ありません、別件が立て込んでます」
実際には立て込んでなどいない。葵をおもちゃにするという楽しいイベントを課長に中断されて、腹が立って反抗しただけである。
樹の席で足を組んで座っている姿からして、バレバレの嘘だ。
「そうかい」
こうなったら桔梗は梃でも動かない。
課長は仕事に関することだけは優秀なので、無理に彼女を出動させない。下手に刺激して仕事をしなくなると困るからだ。気が済めば、また元通りの彼女になることをよく承知している。
「じゃあ葵君とひまちゃん行って」
2人で出動することになった。
◇◇◇◇◇
役場の白い乗用車で二人きりの中、葵は運転しながら「向日葵ちゃんは優しくて素敵だね」と言ってみた。
ラジオだけが、車内でお喋りだった。
幸次からそう言われ嬉しかったのだから、自分が言っても大丈夫だ。そう踏んだ葵だったが、向日葵からは何の反応もない。また、彼女の逆鱗に触れしまったのだろうか。びくびくしながら、葵は現場へと車を走らせる。
向日葵は現場で車を降りてすぐ、「このポンコツ!」と言いながら葵の背中をリュックで攻撃した。
「痛っ!誰も見てないときに言ったのに!なんで八神課長はよくて俺は怒るんだよ」
この流れはまた無視が始まるか、と思われたが、
「そういうことじゃない…仕事中はやめて、ほんと…なんでタイミングわかんないかな。ほんと昔から、昔っからいろいろポンコツ…」
そこで向日葵は鎮火し、今回の騒動は終了した。
ほっとしたポンコツだったが、「そういうことじゃない」はこれからも理解できなさそうだ。
この世の男の9割はクソ。
桔梗の言わんとすることも、分からなくはない向日葵であった。
「1割だといいなあ」
「なんか言った?」
「うっさい9割」
向日葵はリュックを背負いながら、葵に質問した。
「私の好みのタイプ、知ってる?」
葵は彼女が好んできたドラマや漫画などを思い出し、俳優やキャラクターの共通点を探そうとしたが、なかなか好みのタイプに辿り着かない。
うぬぼれて「俺」などと言ってみることも考えた。しかし、腹に拳を入れらるだろうことは一応、彼にも予想できた。
「…さあ…」
そういうわけで、分からないという態度を示した。彼女の答えは予想外だった。
「八神幸次と橘平だよ!!見習え!!」
そう言って、向日葵はさくさく山に入っていった。
「このポンコツ!」
と桔梗から後頭部をはたかれた。葵と同じ能力を持ち、日本刀を振り回して妖物を駆除する彼女。もちろん同年代の女性よりも攻撃力は抜群に高い。
しかも部下で親戚、体力もある葵相手なので容赦ない。叩かれた場所はきっと、真っ赤、腫れている。
「棒読み!これじゃあ訓練にならないわよ、感情込めて!」
「できませんよ、役者じゃないんだから。な、んとも思ってないのに、感情込めるとか」
葵は叩かれた場所を右手で覆いながら反論した。
「少女漫画にでてくるような顔してるくせに。お勉強しかできないタイプね。こいつもクソだ。ねえ向日葵ちゃん?」
「あ…あ、ああ!ほんと、こいつポンコツ!これは流石に私でも騙されないよ。見た目だけだね~」
桔梗に合わせて葵をバカにする向日葵だが、実は心拍数も血圧も呼吸もすべて限界を超え、倒れてしまいそうだった。
葵も棒読みとはいえ、流石に恥ずかしい。しかし「何ともない」といった風に冷静さを装っていた。パワハラで訴えてやりたい。次に何か強要されたら人事に訴えてやろうと思うくらいだった。
桔梗は「心を込めて言いなさいよ、歴代彼女とのことを思い出して」また葵に言わせようとしたが、課長が戻って来た。
しかも、「ねえねえ、妖物出たよ!」感知しながら。
「桔梗ちゃん、ひまちゃんと」
「申し訳ありません、別件が立て込んでます」
実際には立て込んでなどいない。葵をおもちゃにするという楽しいイベントを課長に中断されて、腹が立って反抗しただけである。
樹の席で足を組んで座っている姿からして、バレバレの嘘だ。
「そうかい」
こうなったら桔梗は梃でも動かない。
課長は仕事に関することだけは優秀なので、無理に彼女を出動させない。下手に刺激して仕事をしなくなると困るからだ。気が済めば、また元通りの彼女になることをよく承知している。
「じゃあ葵君とひまちゃん行って」
2人で出動することになった。
◇◇◇◇◇
役場の白い乗用車で二人きりの中、葵は運転しながら「向日葵ちゃんは優しくて素敵だね」と言ってみた。
ラジオだけが、車内でお喋りだった。
幸次からそう言われ嬉しかったのだから、自分が言っても大丈夫だ。そう踏んだ葵だったが、向日葵からは何の反応もない。また、彼女の逆鱗に触れしまったのだろうか。びくびくしながら、葵は現場へと車を走らせる。
向日葵は現場で車を降りてすぐ、「このポンコツ!」と言いながら葵の背中をリュックで攻撃した。
「痛っ!誰も見てないときに言ったのに!なんで八神課長はよくて俺は怒るんだよ」
この流れはまた無視が始まるか、と思われたが、
「そういうことじゃない…仕事中はやめて、ほんと…なんでタイミングわかんないかな。ほんと昔から、昔っからいろいろポンコツ…」
そこで向日葵は鎮火し、今回の騒動は終了した。
ほっとしたポンコツだったが、「そういうことじゃない」はこれからも理解できなさそうだ。
この世の男の9割はクソ。
桔梗の言わんとすることも、分からなくはない向日葵であった。
「1割だといいなあ」
「なんか言った?」
「うっさい9割」
向日葵はリュックを背負いながら、葵に質問した。
「私の好みのタイプ、知ってる?」
葵は彼女が好んできたドラマや漫画などを思い出し、俳優やキャラクターの共通点を探そうとしたが、なかなか好みのタイプに辿り着かない。
うぬぼれて「俺」などと言ってみることも考えた。しかし、腹に拳を入れらるだろうことは一応、彼にも予想できた。
「…さあ…」
そういうわけで、分からないという態度を示した。彼女の答えは予想外だった。
「八神幸次と橘平だよ!!見習え!!」
そう言って、向日葵はさくさく山に入っていった。