第93話 橘平と桜、神社を見せる
文字数 1,842文字
桜はベージュのショルダーバッグからタブレットを出し、八神家で見つけた神社の写真を葵と向日葵に見せた。
「本当にそっくりだな。むしろあれのまんま。森と鳥居まであるのか」
「ここ見て、狛犬みたいなものもあるのよ。八神家も封印に関係してるんじゃないか、って睨んでるの。その解明はこれからだけれど」
「それと、これ。描いてみたんだけど」
そう言って橘平がリュックから取り出したのはスケッチブック。開くと、あのミニチュア神社のデッサンが現れた。全体図のほか、後ろから見た図、屋根、森、などさまざまな各部が写真のように描かれている。3人は見事な描写力にあいた口がふさがらなかった。
「描くことというより、観察を目的に描いてみたんすけど」
「うっま…」
向日葵の「それ以外何が言えます?」な感想に、他二人も激しく同意する。
「へへ、そうですかねえ。まあ特に何も分かんなかったんですけど、森のバケモノって狛犬だったのかなって。ほらあいつら、口開いてるヤツと閉じてるヤツでしたよね」
そう言われて、桜たちはあのバケモノの様子を思い出す。
「多分そうだったかも~?」
向日葵は小さな声で発言する。葵は無言だ。彼女も葵も、戦うことに必至でそこまで覚えていなかった。
「確かにそうだった!」桜はピンときたようだ。「森の中に狛犬。じゃあこの鳥居もどこかにあるのかなあ」
「この模型通りだとすると、森の近くに鳥居のミニチュアがあるってこと~?」
「今まで見たことないけど……犬の散歩ついでにちょっと探してみますね。草むらのなかとかに隠れてんのかな」
また桜は寛平から聞いた情報をもとに、一宮家でまもりに関する物を探していることも報告した。今のところは特にめぼしいものは見つかっていないという。
「まじで?お家広いから、一人で探すの大変でしょ。私もやるよ」
「俺も手伝う」
向日葵と葵がそれぞれ答えた。
「ほんと?じゃあ、今度来てもらおうかな」
ここで橘平は戸惑った。
自分も手伝いがしたい。俺も行くと答えたいけれど、若い男性と会ってはならない桜の家へ、一宮家へ自分が行っていいものなのかが分からなかった。
橘平の表情から察した向日葵は、何か助け船が出せないかと悩んだ。しかし、早々と桜が解決した。
「橘平さんも一緒に来て!友達の家なんだし!」
喜びを深く感じる前に橘平は声を発していた。
「いいの!?」
「うん!」
しかし直後「でも、男の子のお友達ができたなんて正直には言えないからどうしよう」問題がやはり発生した。
向日葵がフレッシュ入りのコーヒーを飲みながらさらっと提案する。
「んなのさあ、私の友達にしちゃって、自由研究でお伝え様見学に来たとかいえばいいのさ。ほら、きー坊は役場の職員の子よ?私が面倒見てるって感じで通るじゃん。その時さっちゃんは…出かけたふりするして合流するとかね」
「おお、じゃあそれでおねしゃす!!」
「いえーい、解決!」
と、橘平と向日葵はグータッチした。
そこまでは良いとしても、結局、社会人のことを考えると捜索は土日に限定されてしまう。
「有休か」
「でもさ、いま有休取りにくいっていうか却下されるらしいじゃん。伊吹さん、お子さんの用事で有休申請して感知器にねちねち言われてた。そして取らず…ぶらっく」
「有休って難しいんすね」と橘平がこぼす。
「去年まではヒマで取りやすかったのよ~今年が異常なんだよ~」
桜は何かを考えていたようだったが、「ねえ」とみなに呼びかけ「みんなで探すならさ、お伝え様の桜まつりの期間はどう?学校始まっちゃってるけど、この時期は神社が忙しくて、家の方はがら空きだから。その土日で。これなら有休取らなくていいよ」
住人である桜の意見がもっとも、とこの件は解決した。気がしたが。
「ああ、そうだ、きゅーじつしゅっきん!ちょっと待って」
そう、社会人組は地獄の休日出勤があり、土日だからと言っていられない現状があった。向日葵と葵はさっと課内のスケジュールを確認する。まだ、その日の出勤者は確定していなかった。
「すまん、決まったら連絡する」
「ああそうか、未成年とか他のオトナが使えるようなら、土日に入れてくんだっけ。スケ確定は来週以降か~」
頬杖をついてままならぬ休日に悲しみを感じていた向日葵だが、ふと視線をテーブルに移すと、それぞれのカップが空になっていた。
だいぶ長々と話していたし、みな喉が渇いたころだろう。「あら、もうみんなドリンクないね~。日本茶でいいかな。入れてくるね」と、台所へ向かった。
「本当にそっくりだな。むしろあれのまんま。森と鳥居まであるのか」
「ここ見て、狛犬みたいなものもあるのよ。八神家も封印に関係してるんじゃないか、って睨んでるの。その解明はこれからだけれど」
「それと、これ。描いてみたんだけど」
そう言って橘平がリュックから取り出したのはスケッチブック。開くと、あのミニチュア神社のデッサンが現れた。全体図のほか、後ろから見た図、屋根、森、などさまざまな各部が写真のように描かれている。3人は見事な描写力にあいた口がふさがらなかった。
「描くことというより、観察を目的に描いてみたんすけど」
「うっま…」
向日葵の「それ以外何が言えます?」な感想に、他二人も激しく同意する。
「へへ、そうですかねえ。まあ特に何も分かんなかったんですけど、森のバケモノって狛犬だったのかなって。ほらあいつら、口開いてるヤツと閉じてるヤツでしたよね」
そう言われて、桜たちはあのバケモノの様子を思い出す。
「多分そうだったかも~?」
向日葵は小さな声で発言する。葵は無言だ。彼女も葵も、戦うことに必至でそこまで覚えていなかった。
「確かにそうだった!」桜はピンときたようだ。「森の中に狛犬。じゃあこの鳥居もどこかにあるのかなあ」
「この模型通りだとすると、森の近くに鳥居のミニチュアがあるってこと~?」
「今まで見たことないけど……犬の散歩ついでにちょっと探してみますね。草むらのなかとかに隠れてんのかな」
また桜は寛平から聞いた情報をもとに、一宮家でまもりに関する物を探していることも報告した。今のところは特にめぼしいものは見つかっていないという。
「まじで?お家広いから、一人で探すの大変でしょ。私もやるよ」
「俺も手伝う」
向日葵と葵がそれぞれ答えた。
「ほんと?じゃあ、今度来てもらおうかな」
ここで橘平は戸惑った。
自分も手伝いがしたい。俺も行くと答えたいけれど、若い男性と会ってはならない桜の家へ、一宮家へ自分が行っていいものなのかが分からなかった。
橘平の表情から察した向日葵は、何か助け船が出せないかと悩んだ。しかし、早々と桜が解決した。
「橘平さんも一緒に来て!友達の家なんだし!」
喜びを深く感じる前に橘平は声を発していた。
「いいの!?」
「うん!」
しかし直後「でも、男の子のお友達ができたなんて正直には言えないからどうしよう」問題がやはり発生した。
向日葵がフレッシュ入りのコーヒーを飲みながらさらっと提案する。
「んなのさあ、私の友達にしちゃって、自由研究でお伝え様見学に来たとかいえばいいのさ。ほら、きー坊は役場の職員の子よ?私が面倒見てるって感じで通るじゃん。その時さっちゃんは…出かけたふりするして合流するとかね」
「おお、じゃあそれでおねしゃす!!」
「いえーい、解決!」
と、橘平と向日葵はグータッチした。
そこまでは良いとしても、結局、社会人のことを考えると捜索は土日に限定されてしまう。
「有休か」
「でもさ、いま有休取りにくいっていうか却下されるらしいじゃん。伊吹さん、お子さんの用事で有休申請して感知器にねちねち言われてた。そして取らず…ぶらっく」
「有休って難しいんすね」と橘平がこぼす。
「去年まではヒマで取りやすかったのよ~今年が異常なんだよ~」
桜は何かを考えていたようだったが、「ねえ」とみなに呼びかけ「みんなで探すならさ、お伝え様の桜まつりの期間はどう?学校始まっちゃってるけど、この時期は神社が忙しくて、家の方はがら空きだから。その土日で。これなら有休取らなくていいよ」
住人である桜の意見がもっとも、とこの件は解決した。気がしたが。
「ああ、そうだ、きゅーじつしゅっきん!ちょっと待って」
そう、社会人組は地獄の休日出勤があり、土日だからと言っていられない現状があった。向日葵と葵はさっと課内のスケジュールを確認する。まだ、その日の出勤者は確定していなかった。
「すまん、決まったら連絡する」
「ああそうか、未成年とか他のオトナが使えるようなら、土日に入れてくんだっけ。スケ確定は来週以降か~」
頬杖をついてままならぬ休日に悲しみを感じていた向日葵だが、ふと視線をテーブルに移すと、それぞれのカップが空になっていた。
だいぶ長々と話していたし、みな喉が渇いたころだろう。「あら、もうみんなドリンクないね~。日本茶でいいかな。入れてくるね」と、台所へ向かった。