第45話 橘平と桜、唐揚げの下ごしらえをする
文字数 1,176文字
必要な食材のほか「一人一つまで!好きなおやつ買っていいよ!」との向日葵の計らいもある、楽しい買い出しとなった。
買い出しが終わった3人はピンク軽に乗り、古民家へ向かう。到着すると桜がカギを取り出し、玄関を開けた。
「なんで桜さんが?」
「ほら、ここってうちの物だから。合鍵持ってるの。葵兄さん、午前中は用事があるんですって」
理由は分かる。けれど男の人が住んでる家の合鍵……と、橘平は妙な気持ちになった。
しかしそれ以上の意味はないのだ。橘平は頭から妙な考えが起こりそうになるたびに、その気持ちを心の消しゴムでかき消す。昨日は二人きりだったよな、という妄想も、両手で重い鉄の扉を押すように頑張って頭から追い出す。葵には向日葵。そこに桜を加えてはならない。そもそも、桜は二人を自分から解放するために奮闘している。それに、向日葵も加われば親子のように見える3人である。葵と何かがあるはずはないのだと、橘平は自分に言い聞かせた。
◇◇◇◇◇
台所に入ると、早速「ひまわり料理教室」が始まった。
向日葵先生が大まかな工程を説明する。生徒たちはまず、味付けのショウガとニンニクをすりおろすように指示された。
「すりおろすのって…疲れるっす」
「ニンニクをぎりぎりまですりおろすのって、難しい…」
「さっちゃん、ケガしないように気を付けて。料理ってなかなか地味で根気がいるのよね~よく食べる2匹がいるから、たくさんすりおろせ~」
二人は鶏肉の切り方も教わる。
「余分なところ切ってって。うんそうそう。食べやすい大きさに」
それから切った鶏肉を調味液に漬ける。
「漬ける時間はパパっと5分の人もいればさ、一晩って人もいるんだけど、今日はお昼ご飯までってことで。あとは揚げるだけ~」
びっくりするほど美味しい神唐揚げ。きっと何か秘密があると思っていた橘平だったが、今のところ、普通の唐揚げと何ら変わりはない。
「隠し味とか、美味しく作るコツとかは」
「まあ、揚げ加減はあるけどお、なんも特別なことはいらない!一番大事なのはキモチ」
向日葵は心臓のあたりに両手を置き、にこりとした。
「ゲストのことを思い浮かべて、美味しく食べてもらいたいって、楽しい食卓にしたいって思うの。嫌いな兄貴にふるまう時でもね。私、料理だけは、そーいうキモチでやんの」
そして桜が付け合わせのサラダを、橘平は味噌汁を作った。
「二人とも、俺の味噌汁は飲める味なんで。安心してください!」
桜が吹き出した。
「やめて橘平さん…お腹痛いよ…」
「さっちゃんたら、葵の料理下手がツボっちゃった~?」にやにや笑いながら、向日葵は炊飯器のスイッチを押した。
あとは葵が帰ってくるのを待つだけとなった。
桜はエプロンを外しながら「そうそう、八神家のことで他に分かったことあったんだ。説明しておくね」と言い、3人は居間に移動した。
買い出しが終わった3人はピンク軽に乗り、古民家へ向かう。到着すると桜がカギを取り出し、玄関を開けた。
「なんで桜さんが?」
「ほら、ここってうちの物だから。合鍵持ってるの。葵兄さん、午前中は用事があるんですって」
理由は分かる。けれど男の人が住んでる家の合鍵……と、橘平は妙な気持ちになった。
しかしそれ以上の意味はないのだ。橘平は頭から妙な考えが起こりそうになるたびに、その気持ちを心の消しゴムでかき消す。昨日は二人きりだったよな、という妄想も、両手で重い鉄の扉を押すように頑張って頭から追い出す。葵には向日葵。そこに桜を加えてはならない。そもそも、桜は二人を自分から解放するために奮闘している。それに、向日葵も加われば親子のように見える3人である。葵と何かがあるはずはないのだと、橘平は自分に言い聞かせた。
◇◇◇◇◇
台所に入ると、早速「ひまわり料理教室」が始まった。
向日葵先生が大まかな工程を説明する。生徒たちはまず、味付けのショウガとニンニクをすりおろすように指示された。
「すりおろすのって…疲れるっす」
「ニンニクをぎりぎりまですりおろすのって、難しい…」
「さっちゃん、ケガしないように気を付けて。料理ってなかなか地味で根気がいるのよね~よく食べる2匹がいるから、たくさんすりおろせ~」
二人は鶏肉の切り方も教わる。
「余分なところ切ってって。うんそうそう。食べやすい大きさに」
それから切った鶏肉を調味液に漬ける。
「漬ける時間はパパっと5分の人もいればさ、一晩って人もいるんだけど、今日はお昼ご飯までってことで。あとは揚げるだけ~」
びっくりするほど美味しい神唐揚げ。きっと何か秘密があると思っていた橘平だったが、今のところ、普通の唐揚げと何ら変わりはない。
「隠し味とか、美味しく作るコツとかは」
「まあ、揚げ加減はあるけどお、なんも特別なことはいらない!一番大事なのはキモチ」
向日葵は心臓のあたりに両手を置き、にこりとした。
「ゲストのことを思い浮かべて、美味しく食べてもらいたいって、楽しい食卓にしたいって思うの。嫌いな兄貴にふるまう時でもね。私、料理だけは、そーいうキモチでやんの」
そして桜が付け合わせのサラダを、橘平は味噌汁を作った。
「二人とも、俺の味噌汁は飲める味なんで。安心してください!」
桜が吹き出した。
「やめて橘平さん…お腹痛いよ…」
「さっちゃんたら、葵の料理下手がツボっちゃった~?」にやにや笑いながら、向日葵は炊飯器のスイッチを押した。
あとは葵が帰ってくるのを待つだけとなった。
桜はエプロンを外しながら「そうそう、八神家のことで他に分かったことあったんだ。説明しておくね」と言い、3人は居間に移動した。