第94話 密室灯籠夜話【上】

文字数 1,790文字

 今から書く話はほら話ってことにして聴いてくれ、嘘っぽーい嘘っぽい。そういう話なので。

 僕は東京でバンドをやっていた頃、同時にケータイ小説を書いていた。ケータイでポチポチ打った文章をメールで知り合いに送信し、それを受け取った知り合いがそいつのアカウントのサイトに載せる、という手法でそれは進められた。だから、当時はその知り合いが書いた文章だと勘違いして、僕が書いたってわからなかったひとも多かったと思う。で、バンドで僕が10分以上僕がギターを弾きながら「語り」を入れる楽曲『閉塞された宇宙』ってのをつくって、忘れもしない2003年の10月11日に国分寺のライブハウスで披露したんだよ。そしたらその知り合いが「おまえは本物になっちまった!」って言い残して逃亡。サイトは消えた。僕の文章も消えた。その文章のリライトが僕の長編小説『密室灯籠』になる。2023年に書いた。それはともかくその後、2004年の2月のライブでバンドは分解して、解散となった。
 そしたら、逆に終わったあとに人気が出た。僕にはファンと呼べるひとたちが出来た。ただ、僕は〈普通の男の子〉に戻ったあとだったので、どうしていいかわからなかった。可愛い、着飾った女の子が僕を観るんだけど、じろじろ見るのも悪いのかな、と思って、見ないで目を背けると「見てくれなかったぁ!」って泣いてしまう子もいる。でもいつも周囲をじろじろ見ながら歩くのは不審者なので出来ないんだよ。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。同時に、僕は当時からトイレが近くて、街中でトイレに入るんだけど、トイレまで付いてきちゃう女の子もいる。男子トイレに女性が入ってくるのはやばいからやめて、というのと、あと、男女兼用の個室のトイレがぽつんとあるとき、入ってから出てくるとドアに密着しているときがある。トイレの音を聴きたいほどなら声をかけてくれ、遊ぼうよ、と思うけど、僕は声をかけられるメンタルではないんだな。
 落ち込んでいるけど体力はあって、いつも都内をうろちょろするんだけど、電車に乗って、肩を落として、がら空きなんだけど手すりにつかまって立って乗っていたんだ、そのときは代々木上原のあたりだったと思う。
 その頃、さすがに目立つから僕も知っているような有名人とかの顔もちらほら見かけるけど、声はかけて来ない。だって、向こうは有名人で、僕は無名人だし。なのに、その電車のドアが開くとき、唯一、アクションを起こしてくれた方がいたんだよ。そのひとは有名人になってからも電車移動をしている、というのは知っていたんだけど、その女性、坂井さんって言うひとなんだけど、彼女が、下を向いてドアの横で立っている僕のお尻にハンドバッグをばしーん、て叩きつけてから、こっちを向いてから降りていった。見間違えるわけないんだよな。今って美容が発達したから美人に見えるひともいるけど、レースクイン上がりの細身だし、それにね、知ってる人は知っているけど、アイドルさんとかって、本当に同じ人間か、ってくらい顔が小顔だったりして、明らかにからだのつくりからして違うんだよ。で、テレビには出ないんだけど、本当にCDジャケットそのままなんだよ、その坂井さん。加工してるわけではない(しててもしてなくても超絶美人!)。坂井さん、しばらくして若くして亡くなっちゃったから、本来なら献花くらいしたいと今でも思っている。泉さんね。嘘みたいでしょ。でも、嘘みたいな話は続く。

 その後、知り合いのすすめで僕は声優オタクになった。変わり果てた僕に落胆したり、そこから僕を憎んだひとが圧倒的に多かったと思う。
 ときは過ぎて、いろいろあったけど、時計の針を進めて2015年の話だ。
 まずは僕がコンサートの〈舞台装置〉になった話をしたい。これ、事務所的に大丈夫なのか? わからない。削除されてたらごめん。とりあえず、書いている今現在が午前三時半なので、眠って起きて、それから続きを書く。日を開けるかもしれないけど、書きたいと思う。僕はそのひとのファンだし、そのひとがスポットライト(ダブルミーニングになる)を当ててくれなければ、僕は腐り果てて潰れてしまっていたと思う。だから、〈恩人〉だと思っている。ぼかして書くし嘘にしか聞こえないし、いろいろ怖いけど、書き留めないと、って思う。そういうことで。
 では、次回に続く!!
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