第6話 彼女はきっとしあわせだから。

文字数 315文字

 会社に辞表を出し、受理された次の日は晴れだった。
 コートの襟を立て街を歩く。
 雑踏。ここに紛れれば、僕は顔を失った大衆の一人となる。
 ゲーセンの前でケバブを買って食べながら、店内に入る。
 ケバブを包んでいた紙袋を捨てるためにカードとシミュレーションゲームを合わせた筐体の近くへ。
 上手いプレイヤーが人を集めていた。
 筐体に打ち込むその女性を見ると、元カノだった。
「アーケードゲームやる趣味、あったんだ……」
 筐体を操作する彼女を初めてみた。
 声をかけようか?
 思った矢先、缶コーヒーを筐体の横から彼女に渡すスーツ姿の男性。
 二人でプルタブを開け、缶コーヒーを飲み笑顔。
「二人を祝おう」
 僕は彼女から辞表を提出されたんだし。



(了)
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