第56話 コンテンポラリー文学のために

文字数 1,806文字

 ゴリラズ、という覆面バンドがある。
 wikiから拾うと「ゴリラズ(Gorillaz)は、1998年に結成された、楽曲面を担当するイギリスのロックバンド・ブラーのデーモン・アルバーンと、ヴィジュアル面を担当する「タンク・ガール」などの作者であるコミック・アーティストのジェイミー・ヒューレットによるバーチャル覆面音楽プロジェクト」と、ある。
 ブリットポップでオアシスと覇権を争ったブラーというバンドのボーカリストであるデーモン・アルバーンがやっているバンド、と言った方がわかりやすい。
 で、そこに、覆面になるようにキャラクターイラストなどがついていて、そのキャラたちがやっているバンド、という位置づけだ。
 ゴリラズは2ndアルバム『Demon Days』から、積極的にコラボをする。デーモン・アルバーンはボーカリストなのだが、参加ミュージシャンなどがゲストボーカルをしまくる。
 4枚目のアルバム『The Fall』は、打って変わってレコーディング、ミキシング、マスタリングに至るまで全部をiPadアプリで作成、しかも、バンドツアーの旅先でレコーディングを「日記のように」つくった作品である。
 その後、シリアスな楽曲オンパレードで、日本でいうところの「キャラクターのボイスドラマ」のようなものをつけたアルバムを出したかと思えば、次は徹底的に明るいトーンのアルバムを出す。
 これを書いている現在での最新アルバムでは、既存のようなアルバムをつくるのを自らに禁じ、その〈瞬間〉を大事に、独立したシングルを毎月リリースするのをあとでアルバムにまとめる、ということをしている。曰く「これが〈コンテンポラリー〉の定義だよね!」とのこと。


 ゴリラズのレビューみたくなっちゃったけど、こういうことを僕は〈小説のフィールドでやりたい〉と思っている。
 僕も、毎回、コンセプトを変えて書いている。
 たとえば、『死神はいつも嘘を吐く』は、先んじて『パイナップルサンド』という現代美術に関したライトノベルを2011年の暮れにつくり、そのキャラを援用し、現代思想を中心に据えたチャットノベルをつくる、という試みをしている。
 次に、『偽典・蘆屋探偵事務所録』は、友達とslackのグループチャットで「電子文芸部」を結成、最初はそのグルチャのメンバーを登場させる、という制約のもと、小説を書き始めた。
 『夢浮橋モダン天鵞絨』は、大正ロマンから昭和モダンまでの思想家などを女体化させた百合小説であり、また、ほかにつくろうとしていて短編だけがいくつか、今のところ存在している〈抹茶ラテの作法と実践〉のキャラもクロスオーバーで使っている。同シリーズのキャラを使って、「キャラクターが詠んだ短歌」という試みや、現在続いている自作品宣伝チャットノベル『早退届』でも、抹茶ラテのキャラを中心にして書き続けている。
 『百瀬探偵結社綺譚』は、日本に伝来しているかたちの仏教などなどを全部、大ざっぱに網羅する、というコンセプトでつくった。
 また、僕は曲もつくるので『るるせミキサー計画』で、電気グルーヴの『メロン牧場』と、麻枝准の『殺伐ラジオ』へのオマージュも兼ねて、楽曲紹介などしつつ雑談するチャットノベルをつくった。
 『文芸部は眠らせない』は、第一部にあたる部分はもう5年くらい前に書いたものを要望によりサルベージし、続きを書いた。内容としては、文学とクリティークをネタにした、メタ文学作品だ。
 そして、今連載に力を入れている『密室灯籠』は、2003年にケータイサイトで書いていた作品のリライトだ。私小説とも自伝とも言える内容を書きながら、渡り歩いたさまざまな意味合いでのサブカルチャーなどの解説も行う、というスタイルのエッセイ風の純文学作品だ。

 こう書き出してみると、僕も同じことはやらないで作品を紡いでいる。
 かなり〈自由〉だ。
 だが、まだ足りない。
 自由が、足りない。
 僕は、もっと小説の海を自由に泳げるはずだ。
 だから、頑張る。
 頑張れば、ゴリラズのように、もっともっと変幻自在になれると思うんだ。

 いや、DTMやってるんだから音楽でやればいいんじゃないか、と気の迷いが生じるが、あくまで僕は小説というフィールドでゴリラズのようになりたい。
 僕も〈コンテンポラリー〉な作家になりたいのだ。
 目標達成のため、これからも走り続けるつもりなので、よろしくね。
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