第3話 チョコレートガール☆ディスコ NOVELDAYS編

文字数 2,207文字

「ましまろはぁ~、関係ない!!」
「ましまろはぁ~、関係ない!!」
「チョコレートと関係ない!!!!」
「チョコレートと関係ない!!!!」

「ちょっ! 恥ずかしいからやめて、店内で大声出して歌うのは!!」
「むしろなんなのです、理科? ボクとちはるが歌っているのは、そもそも田山家が火の車だからなのですよ?」
「そーだよ、お姉ちゃん。いきなり気が違ったようにスマホゲームに重課金するんだもん。どーしたのかな、理科お姉ちゃん? ついにわたしの色香でメロメロになって気がヘンになっちゃったかな?」
「はぁ」
 わたし、田山理科はため息を吐いた。
 妹のちはると居候のみっしーの三人で、ワンルームで暮らしているわたしたちは今、未曾有の財政難に襲われている。
 原因はスマートフォンゲームの課金。
 実を言うとわたしのせいだ。
 居候・みっしーの友達のすめろぎしゅーこちゃんが教えてくれた『ドキッ♡イケボ文豪帝国』にわたしがハマってしまい、バレンタインのSSレアキャラが欲しくて課金してしまったの。
 お金がすっからかん。
 こんな阿呆なことになるとは思わなかった。
 そんなとき、時節柄、バレンタインが終わり、チョコレートが近くのスーパー【オオゼキサミット】で特売になっているから、来てみたの。

「Yo!」
「むむっ!」
 ショッピングカートを押していたみっしーの足が止まる。
「みっしー、オマエ、なにやってるんダヨ?」
「くっ! 貴様はエンジェル・ジャクソン!!」

 なんか、ややこしいのが出てきた……。
 これだからトラブルメーカーのみっしーと出歩くのは嫌なのよ。

「みっしー、オマエ、金に困ってるニオイが『PUI!PUI!モリュカー』してるゼ?」
「失せろや、似非天使なのです! ジャクソンこそチョコレート売り場でなにやってるのです? ついに天使失格ですかぁ?」
「オマエ……天使が失格したら堕天使になっちゃって格好良さマックスジュースになっちまうダロ? おれのチョコバットでひーひー言わされたいノカ?」
「死ね! 死ぬのです! なにがチョコバットなのです」
「ふふ……。今のおれは天使長の命令でスーパーの余り物チョコレートの物色さ!」
「けちくさいですね……、その天使組織」
「黙れYOナ!」
「うっせーですよ! こちらこそぶっ殺すのです! 死神のボク、みっしーの実力を見せねばならぬときが来たようですね!! いでよ【大鎌・ハネムーンスライサー】!!」

「やめて! 二人とも!!」
 ちはるが叫ぶ。
 偉い!
 これでこそ我が妹!
「作品の設定がたくさんあって、短編じゃ入りきらないよ! 一見(いちげん)さんお断りじゃここ、ノベルデイズじゃやっていけないよ?」

 その場の全員がちはるの一言でずっこける。

「いや、ちはる。そうじゃなくてね……。メタ発言はやめてね」
「うん! わかったよ、お姉ちゃん」
 いや、もう遅いけどね。
 運営になにか言われないか恐怖で打ち震えるけどね、わたしは。
「ここで露骨にチャットノベル版権キャラクターのメイコさんとか出したらややこしいから本当に運営とかそういう難しい話はやめてね、ちはる……」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん! メイコさんはわたしの二次創作ショートショートの中でずっと生き続けていくから……!!」
「いや、なにちょっと涙出しながら言ってるの、ちはる? どこでも版権キャラは看板娘やってるからね?? メイコさんも、だよ??」
「そうだよね! わたしたちの心の中には、いるもんね!」
「ちょっと怖いからやめて、その話。ちなみにこれは二次創作じゃないしガイドライン的にオーケーか怪しくなってきたわ」

 と、そこにエンジェル野郎が不敵な笑みを浮かべる。
「ふふふ。理科、ダッタな? 登録商標を使うということがどういうことか身をもって……うげらぼおおおおおおっふぁああぁぁ!」
 喋ってる途中で大鎌によって足払いを掛けられたジャクソンがくるくる回転して吹き飛んだ。
「ぐっはああああああああああああああ!!」
 どんがらがっしゃーん! と大きなオノマトペを立てて、チョコレートの棚に頭から突っ込む。
「ザマァ、なのですよ? ジャクソン? ふふ」
「痛てぇ……、痛いゼ、おれのハートが。バクバクしやがるゼ」
「おやおや、ボクに告白でもしますか、ジャクソン?」
「チッ! 持っていっていいぜ、このチョコ。もう売り物にならねーカラな!」

 えーっと。
 どういうこと?

「おれなりの告白サ! 実はおれ、『ドキッ♡イケボ文豪帝国』にハマってしまい、バレンタインのSSレアキャラが欲しくて課金してしまったから、金の埋め合わせのためにバイトの命令が下されて、マニーがないからこんなチョコ地獄に突き落とされちまっていたってわけサ!」
「って、おまえもかよ!!」
 思わずツッコミ入れるわたし。
「告白しちまった以上、おれの負けサ! ルーザーってわけ。持ってけ、チョコを。ありったけ、な。金はおれがなんとかする。オマエらも困っていたんだろう? 決算期ダシナ?」
「うっせ、ボゲ、なのですよ? チョコレートだけはもらっておくのです」
「よかったね、お姉ちゃん、それにみっしーも!」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……………………。

 腕組みしてこっちを睨んでいるひとがいる。
 言うまでもなく、それはスーパー【オオゼキサミット】の、偉い人だった。

 そしてわたしたちは、スーパーがクローズの時間になるまで、たっぷりと説教を喰らったのでした、とさ。




〈了〉 
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