第85話 Think of wind.

文字数 848文字

 カポーティ、という作家がいる。僕が大好きな映画『ティファニーで朝食を』の原作者だ。
 僕はカポーティについてほとんど知らないが、村上春樹が最近、翻訳(新訳)を行っているので、日本ではこれから読まれる作家になるのではないか、と思われる。
 作家としては珍しくニューヨーカー誌のゴシップ欄に載る常連だったらしい。ノンフィクションノベルという新地平を開拓したがその後は長編を書き上げることが出来なかったこともあり、生涯での作品数は少ない。
 美男だし若くして作家になったひとなのだが、最後の作品になった小説のモデルのひとりに「チビのオカマ」呼ばわりされたことを根に持っていた、というエピソードが残っている。カポーティの作品は初期から女性との距離感が当時のほかの作家と違うし、同時に、どうも身体や精神に障害がある人物を描くことが多く、伝記的なことで言うと、セクシャリティの違和感とフリークス性を、自分を見るときの鏡に映ったものと捉えるところが若くしてあったみたいだ。
 人生で、身の回りに、あまりに自ら命を絶ってしまう人物が多かったのはウィキにも書いてあるし、自分の身体に違和感を持つに至るエピソードも、日本のウィキにはないけど、あったようだ。その話を知ったとき、俄然僕はカポーティに興味が湧いた。
 作劇法に、男性が魅力的な女性ヒロインを書くときには男性の視点でものを見るな、というものがある。『ティファニーで朝食を』が名作として受け継がれるのは、原作にもしかしたらヘップバーンが演じる役とカポーティ自身をつなぐ線が存在しているのかもしれない。
 僕は阿呆なくらい女性が性的に好きだが、それはそれとしてカポーティの作品に、入門したく思うのだ。読む時間がつくれるといいなぁ。
 ちなみに、カポーティの『最後のドアを閉めろ』に出てくる文章、「Think of nothing things,think of wind.」から、村上春樹がタイトルを付けた自分の作品が『風の歌を聴け』であり、これが村上春樹のデビュー作だ。
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