第4話 その湿度

文字数 288文字

 ぶっ壊れ切った脳髄の中で、胎児の夢は続く。
 薙ぎ払った雑草の束を熊手で集め、おれは首に巻いた手拭いで汗を拭く。
 選挙カーががーがーとがなる。
 スピーカーの音は割れないようにしているらしいが、輪郭がぼやけた挨拶の声。
 日差しは紫外線をおれにあて、心を疲弊させる。
 酩酊した気分になるのはいつものこと。
 解放された病棟がこの国だ。
 みんな、どこか狂っている。
 病棟を歩くその歩幅が、人生の歩みってわけだ。
 選挙カーがどこかへ消える。これから旨い飯でも食うのだろう。
 おれは道路を遠くから見て、それから作業に戻る。
 ああ。この湿度。電車の音が聞こえるから、きっと明日は雨だ。



(了)
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