第5話 勝負

文字数 356文字

 僕は願った。世界の終末を。
 罰は罰でしかなく、すべてを清算するには、人類は消えるしかないのでは、と思った。
 もしかしたら、そう思うのが楽だからなのかもしれなかった。
 終末のうたを歌うディーヴァのする呼吸の間、その息継ぎの間に、世界は滅びるだろう。
「滅びるのはお前だ」
 遠くに行ってしまった友人たちが、口々にそう、言う。
「そっかな。いや、それも、いいな」
 嘯く僕。
 実在論を忘れた僕は気取った足取りで郊外のショッピングモールを歩く。
 一着の服を選ぶと、それをレジへ。
 レジのお姉さんは僕に、
「5000円ちょうどです」
 と、事務的に値段を告げる。
 生きることは消費する、ということだ。
 この世界を消費するまで、みんなは服を買ったり飯を食べたり性行為に夢中になるのだろう。
 僕と世界、滅びるのはどちらが先か。勝負だ。
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