第20話 少女蒐集家序説
文字数 3,886文字
忌み子。
僕は望まれないで生まれてきた子供だった。
だから、僕は〈国生みの伝説〉に出てくるイザナギ、イザナミの忌み子である水蛭子(ひるこ)と同じように、天磐櫲樟船(あめのいわくすふね)、つまり葦の船に乗せられて、流されていってしまった。
これは、例えるならば、そういう話だ。
そして僕、萩月山茶花の少年時代の物語でもある。
☆
今で言えば、ネグレクト、つまり育児放棄をされて育ったのが僕だ。
歯磨きの習慣すら、身につかないまま、学生になった。
ごはんの食べ方も、上手くできない。
身なりのきたない子供だった。
いじめられる要因なんて、山ほどあった。
だから、僕は黙って、歯を食いしばって教室の隅の方にいて、鉛筆をナイフで削って過ごした。
ナイフの使い方は上手くなったかもしれない。
だが、ひとに対してナイフを使うことはなかった。
僕は教室だけでなく家でも母親に小突かれて
「気味の悪い子」
と、毎日毎食事に言われていたが、黙って過ごし、ナイフを使うことはなかった。
男性のセックスの相手をさせられたことが何回もある。
気持ち悪かった。
気持ち悪がる僕を見て、母はうひゃひゃひゃひゃひゃ、と笑った。
にらみつけると、小突かれた。
母が呼んでくる男性はどいつもこいつも暴力的な奴だった。
痣ができるまで殴られ、叩かれ、身体が腫れ上がる頃に、男たちは僕の中に入った。
町の山奥に、名馬ヶ滝と呼ばれる場所があった。
名馬ヶ滝にはひとはいつもおらず、僕は安心して、昼寝(シエスタ)するのだった。
ある日、仮眠のつもりがあたりが暗くなるまで眠りこけてしまった。
「でんどん、でんどん」
不思議な、残響音が響く声を出し、僕を起こす、誰か。
それは、若くてハイトーンの、女性の声だった
「でんどん、でんどん」
滝の音に混じり、苔むした石に腰掛け、蒼い天狗の面の人物が、こりもせず、
「でんどん、でんどん」
と、残響する声を出す。
僕は起きる。
「君は誰だい?」
女性は背が僕よりひとまわり低い。
「子供に声をかけるように訊くでない、若造。我が輩の名は、百瀬珠。我が輩のプレコグ能力が発動してのぉ。町を観に来たのじゃ」
「観たところで、この町にはなにもないよ……。しかもいじめられっ子の僕には、案内できる場所なんてどこもないさ。だって、大人にまでいじめられているんだもん」
「悲観するでないぞ」
「悲観もするさ。それから、プレコグって、なに?」
「〈プレコグ〉とは、〈予知能力〉の一種じゃ。それを有しているが故、我が輩には、未来が見える。まー、ぼやけてじゃが、な」
「嘘だぁ。なにが見えるの?」
「金のなる木。我が輩のプレコグ能力は、お金に関するものを察知するのに特化しておるのじゃ!」
「ふぅん」
「興味なさそうじゃな、ガキよ!」
「ガキじゃないよ! それを言ったら君だってガキだろ」
「背が低いーだーけーじゃーッ!」
「その天狗の面も、よくわからないし」
「いや、ここは天狗とも縁がある地方じゃろ」
「知らないよ、そんなの」
「そのうち、わかるじゃろうて。それよりも、喜べ、少年。我が輩からプレゼントじゃ!」
「プレゼント?」
天狗の面でプレコグ能力者だという百瀬珠が差し出した手のひらの上には、大きな木彫りの蜘蛛があった。
「蜘蛛?」
「はぁ。なにも知らんのじゃな、おぬしは。この地方の人々のことを外部の人間は〈土蜘蛛〉と呼ぶのじゃぞ」
「あんまり良い印象、持たれてなさそうな名称だね」
「ふむ。その通りなのじゃよ。その昔、朝廷に叛逆していた故、そう呼ばれていたのじゃ。おぬしだっていじめられておるのじゃろ? どうじゃ? この蜘蛛と同じじゃろ。持っていて損はないと思うが。選択をするのじゃ。この木彫りの蜘蛛。欲しいか、欲しくないか? もらうかもらわないか、選ぶのじゃ」
「……選ぶ? 僕が、選ぶ?」
「そうじゃよ。おぬしはなにも学んでこなかった。学べる状態でもなかったのじゃと思う。同時に、〈選択肢がない〉とまわりに思い込まされていた。遺憾なことじゃ。じゃから、今、選んでみよ。自分で。選べるというのは、責任が伴うが、その代わり自由を手にした気分じゃぞ。もちろん、選択肢が二つあって、そこから選ぶことを自由と呼ぶかは、定義によっては違うという場合もあるが、の」
「なんだか難しい話だなぁ。わかった。もらうよ、その木彫りの蜘蛛!」
「よし! 偉いぞ少年! 我が輩、感動じゃ!」
「少年じゃないよ。僕の名前は、萩月山茶花だ」
「山茶花、か。手放すんじゃないぞ」
「わかった!」
「真っ暗になる前に帰るとよいぞ」
「わかったよ、じゃーね、天狗!」
「百瀬珠じゃよ。ひとは我が輩を〈魔女〉と呼ぶが、の」
☆
次の日。
また名馬ヶ滝に行くと、天狗の面のあいつはいなかった。
百瀬珠、って言ってたっけな。
僕が岩をベッドに寝そべっていると、ヒヒーン、という馬の鳴き声と、
「早くこっちさくんべさ!」
という、訛ったおっさんの声が、近づいてきた。
身を隠しながらおっさんを見る。
連れていたのは、妖怪のような馬、のような動物だった。
顔は馬だがおでこに角が生えていて、身体が竜のようになっている。
「おまえもあの萩月山茶花と同じ、忌み物じゃぁ。ここで消えてくんろ!」
おっさんは大きな鉈(なた)で、馬のような動物の首をはねた。
はねた頭の角を持って、滝壺に放り投げた。
それから、胴体も、重さによたよたしながらも、滝壺に捨てる。
僕は、見てはいけないものを見たような気分になった。
そっと立ち上がり、逃げだそうとすると、
「そこにいるのは誰だべ!」
と、おっさんが僕の姿を捉えて、叫んだ。
僕がびくりとしたその瞬間。
滝壺から水が噴水のように吹き上がった。
滝の頂上まで、水が垂直に上がったかと思うと、その大量の水が押し寄せてきた。
「ひ、ひぃ。た、祟りじゃぁ!」
あふれ出す水は止まらない。
瞬時に水流に流される僕とおっさん。
僕は泳げない!
どうしよう!
僕は濁流に飲み込まれ、身体は流されるままだし、肺にまで水が入ってきて、もうダメだ、と思った。
そのときのことだった。
☆
濁流の水中で、百瀬珠からもらった木彫りの蜘蛛が輝きだした。
蜘蛛は糸を吐いた。
それは、鋼鉄のワイヤーのようだった。
蜘蛛のワイヤーは僕の足をぐるぐる巻きにした。
その一方で、蜘蛛は水の外に向かって〈糸〉を吐く。
ワイヤーの糸は、どこかの巨木かなにかに絡みついたようだった。
僕は引っ張られるように、濁流の外へと水中から引き上げられた。
僕の身体は、足から逆さづりで、滝上の樹海の巨木に引き寄せられ、巻き付けられた。
僕は、助かった。
これは、紛れもなく、洪水だった。
町の方を見ると、家々が洪水で流されていくのが見えた。
僕は逆さづりになりながら、その様子を、ぼーっと見るのだった。
☆
枯れ木の、枯れ枝だった。
この町のすべてが。
狐狸に化かされていたかのような。
いや。
天狗にでも化かされていたかのような。
一夜明けて、逆さづりのままで目を開けると、そこには、町なんて最初からなかったかのように、すべてが木や枝で、そこに枯れ葉が流れ込んでいった風にしか、見れなかった。
「ど、どういうこと、……だ?」
唖然としていると、ワイヤーが切れて、土の地面に僕は頭から落下した。
痛い。
僕を立ったままでのぞき込む背の低い、少女のような顔立ちの、ゴシックロリータ服を着ている人物。
「我が輩じゃよ。百瀬珠じゃ」
「ああ……」
僕は声にならない声を出した。
「おぬし、帰る場所は、もうあるまい。……いや、最初からなかったじゃろ。うちで面倒を見てやろうぞ。喜べ。我が輩は金のなる木を手に入れてうっはうはじゃ」
「……………………」
「迷い猫探しも探偵の仕事じゃ。今回の猫はおぬしだったのじゃ。……ようこそ、〈百瀬探偵結社〉へ。おぬしは金のなる……じゃなかった、探偵として、うちで働くがよい。我が輩が探偵結社の〈総長〉、百瀬珠じゃ。よろしくの」
いきなりだが、僕の物語は、ここからが始まりだった。
つまり、僕の人生のスタートが。
〈了〉
********************
お騒がせしてます、成瀬川るるせです。今回は骨組みとして使った地元の伝説が3つあって、その3つを組み合わせて作成しました。アレンジしすぎたけど。
******************
『名馬里ヶ淵伝説』
へんてこな馬が生まれてしまったのでナメリガフチという淵へその子馬を捨てたら大洪水が起こった。実際にその土地であった大洪水がモデルになっているらしい。
『コグロ淵の主』
釣り人が滝から出てきた蜘蛛に、足の指に糸を絡まれる。糸を切り株に巻き付けたら切り株が淵の中へ。魚を入れた竹かごをみると、魚が枯れ木の枯れ枝になっていた。
『天狗の腰掛け石』
天狗に毎夜、空を飛ばせてもらう男。天狗が「赤飯をつくって持ってきてくれ。誰にもこのことを言うな」と言う。男は妻に空を飛んだ話をするが、信じてもらえない。赤飯もつくらなかった。天狗は二度と来なかった。
******************
……以上が、地元の3つの、滝にまつわる伝説です。コピペじゃなくて(ソースがウェブにないっぽいので)、かなり端折って説明しました。民話の構造が、ちょっとプリミティブなかたちで残っているんですよ。なので、マイナーな伝説。ナメリガフチ伝説以外は、町で知ってるひと、あまりいないのですが、紹介がてら使わせてもらいました。いつもいろんな方にご迷惑をかけてしまい、すみません。では、また。
僕は望まれないで生まれてきた子供だった。
だから、僕は〈国生みの伝説〉に出てくるイザナギ、イザナミの忌み子である水蛭子(ひるこ)と同じように、天磐櫲樟船(あめのいわくすふね)、つまり葦の船に乗せられて、流されていってしまった。
これは、例えるならば、そういう話だ。
そして僕、萩月山茶花の少年時代の物語でもある。
☆
今で言えば、ネグレクト、つまり育児放棄をされて育ったのが僕だ。
歯磨きの習慣すら、身につかないまま、学生になった。
ごはんの食べ方も、上手くできない。
身なりのきたない子供だった。
いじめられる要因なんて、山ほどあった。
だから、僕は黙って、歯を食いしばって教室の隅の方にいて、鉛筆をナイフで削って過ごした。
ナイフの使い方は上手くなったかもしれない。
だが、ひとに対してナイフを使うことはなかった。
僕は教室だけでなく家でも母親に小突かれて
「気味の悪い子」
と、毎日毎食事に言われていたが、黙って過ごし、ナイフを使うことはなかった。
男性のセックスの相手をさせられたことが何回もある。
気持ち悪かった。
気持ち悪がる僕を見て、母はうひゃひゃひゃひゃひゃ、と笑った。
にらみつけると、小突かれた。
母が呼んでくる男性はどいつもこいつも暴力的な奴だった。
痣ができるまで殴られ、叩かれ、身体が腫れ上がる頃に、男たちは僕の中に入った。
町の山奥に、名馬ヶ滝と呼ばれる場所があった。
名馬ヶ滝にはひとはいつもおらず、僕は安心して、昼寝(シエスタ)するのだった。
ある日、仮眠のつもりがあたりが暗くなるまで眠りこけてしまった。
「でんどん、でんどん」
不思議な、残響音が響く声を出し、僕を起こす、誰か。
それは、若くてハイトーンの、女性の声だった
「でんどん、でんどん」
滝の音に混じり、苔むした石に腰掛け、蒼い天狗の面の人物が、こりもせず、
「でんどん、でんどん」
と、残響する声を出す。
僕は起きる。
「君は誰だい?」
女性は背が僕よりひとまわり低い。
「子供に声をかけるように訊くでない、若造。我が輩の名は、百瀬珠。我が輩のプレコグ能力が発動してのぉ。町を観に来たのじゃ」
「観たところで、この町にはなにもないよ……。しかもいじめられっ子の僕には、案内できる場所なんてどこもないさ。だって、大人にまでいじめられているんだもん」
「悲観するでないぞ」
「悲観もするさ。それから、プレコグって、なに?」
「〈プレコグ〉とは、〈予知能力〉の一種じゃ。それを有しているが故、我が輩には、未来が見える。まー、ぼやけてじゃが、な」
「嘘だぁ。なにが見えるの?」
「金のなる木。我が輩のプレコグ能力は、お金に関するものを察知するのに特化しておるのじゃ!」
「ふぅん」
「興味なさそうじゃな、ガキよ!」
「ガキじゃないよ! それを言ったら君だってガキだろ」
「背が低いーだーけーじゃーッ!」
「その天狗の面も、よくわからないし」
「いや、ここは天狗とも縁がある地方じゃろ」
「知らないよ、そんなの」
「そのうち、わかるじゃろうて。それよりも、喜べ、少年。我が輩からプレゼントじゃ!」
「プレゼント?」
天狗の面でプレコグ能力者だという百瀬珠が差し出した手のひらの上には、大きな木彫りの蜘蛛があった。
「蜘蛛?」
「はぁ。なにも知らんのじゃな、おぬしは。この地方の人々のことを外部の人間は〈土蜘蛛〉と呼ぶのじゃぞ」
「あんまり良い印象、持たれてなさそうな名称だね」
「ふむ。その通りなのじゃよ。その昔、朝廷に叛逆していた故、そう呼ばれていたのじゃ。おぬしだっていじめられておるのじゃろ? どうじゃ? この蜘蛛と同じじゃろ。持っていて損はないと思うが。選択をするのじゃ。この木彫りの蜘蛛。欲しいか、欲しくないか? もらうかもらわないか、選ぶのじゃ」
「……選ぶ? 僕が、選ぶ?」
「そうじゃよ。おぬしはなにも学んでこなかった。学べる状態でもなかったのじゃと思う。同時に、〈選択肢がない〉とまわりに思い込まされていた。遺憾なことじゃ。じゃから、今、選んでみよ。自分で。選べるというのは、責任が伴うが、その代わり自由を手にした気分じゃぞ。もちろん、選択肢が二つあって、そこから選ぶことを自由と呼ぶかは、定義によっては違うという場合もあるが、の」
「なんだか難しい話だなぁ。わかった。もらうよ、その木彫りの蜘蛛!」
「よし! 偉いぞ少年! 我が輩、感動じゃ!」
「少年じゃないよ。僕の名前は、萩月山茶花だ」
「山茶花、か。手放すんじゃないぞ」
「わかった!」
「真っ暗になる前に帰るとよいぞ」
「わかったよ、じゃーね、天狗!」
「百瀬珠じゃよ。ひとは我が輩を〈魔女〉と呼ぶが、の」
☆
次の日。
また名馬ヶ滝に行くと、天狗の面のあいつはいなかった。
百瀬珠、って言ってたっけな。
僕が岩をベッドに寝そべっていると、ヒヒーン、という馬の鳴き声と、
「早くこっちさくんべさ!」
という、訛ったおっさんの声が、近づいてきた。
身を隠しながらおっさんを見る。
連れていたのは、妖怪のような馬、のような動物だった。
顔は馬だがおでこに角が生えていて、身体が竜のようになっている。
「おまえもあの萩月山茶花と同じ、忌み物じゃぁ。ここで消えてくんろ!」
おっさんは大きな鉈(なた)で、馬のような動物の首をはねた。
はねた頭の角を持って、滝壺に放り投げた。
それから、胴体も、重さによたよたしながらも、滝壺に捨てる。
僕は、見てはいけないものを見たような気分になった。
そっと立ち上がり、逃げだそうとすると、
「そこにいるのは誰だべ!」
と、おっさんが僕の姿を捉えて、叫んだ。
僕がびくりとしたその瞬間。
滝壺から水が噴水のように吹き上がった。
滝の頂上まで、水が垂直に上がったかと思うと、その大量の水が押し寄せてきた。
「ひ、ひぃ。た、祟りじゃぁ!」
あふれ出す水は止まらない。
瞬時に水流に流される僕とおっさん。
僕は泳げない!
どうしよう!
僕は濁流に飲み込まれ、身体は流されるままだし、肺にまで水が入ってきて、もうダメだ、と思った。
そのときのことだった。
☆
濁流の水中で、百瀬珠からもらった木彫りの蜘蛛が輝きだした。
蜘蛛は糸を吐いた。
それは、鋼鉄のワイヤーのようだった。
蜘蛛のワイヤーは僕の足をぐるぐる巻きにした。
その一方で、蜘蛛は水の外に向かって〈糸〉を吐く。
ワイヤーの糸は、どこかの巨木かなにかに絡みついたようだった。
僕は引っ張られるように、濁流の外へと水中から引き上げられた。
僕の身体は、足から逆さづりで、滝上の樹海の巨木に引き寄せられ、巻き付けられた。
僕は、助かった。
これは、紛れもなく、洪水だった。
町の方を見ると、家々が洪水で流されていくのが見えた。
僕は逆さづりになりながら、その様子を、ぼーっと見るのだった。
☆
枯れ木の、枯れ枝だった。
この町のすべてが。
狐狸に化かされていたかのような。
いや。
天狗にでも化かされていたかのような。
一夜明けて、逆さづりのままで目を開けると、そこには、町なんて最初からなかったかのように、すべてが木や枝で、そこに枯れ葉が流れ込んでいった風にしか、見れなかった。
「ど、どういうこと、……だ?」
唖然としていると、ワイヤーが切れて、土の地面に僕は頭から落下した。
痛い。
僕を立ったままでのぞき込む背の低い、少女のような顔立ちの、ゴシックロリータ服を着ている人物。
「我が輩じゃよ。百瀬珠じゃ」
「ああ……」
僕は声にならない声を出した。
「おぬし、帰る場所は、もうあるまい。……いや、最初からなかったじゃろ。うちで面倒を見てやろうぞ。喜べ。我が輩は金のなる木を手に入れてうっはうはじゃ」
「……………………」
「迷い猫探しも探偵の仕事じゃ。今回の猫はおぬしだったのじゃ。……ようこそ、〈百瀬探偵結社〉へ。おぬしは金のなる……じゃなかった、探偵として、うちで働くがよい。我が輩が探偵結社の〈総長〉、百瀬珠じゃ。よろしくの」
いきなりだが、僕の物語は、ここからが始まりだった。
つまり、僕の人生のスタートが。
〈了〉
********************
お騒がせしてます、成瀬川るるせです。今回は骨組みとして使った地元の伝説が3つあって、その3つを組み合わせて作成しました。アレンジしすぎたけど。
******************
『名馬里ヶ淵伝説』
へんてこな馬が生まれてしまったのでナメリガフチという淵へその子馬を捨てたら大洪水が起こった。実際にその土地であった大洪水がモデルになっているらしい。
『コグロ淵の主』
釣り人が滝から出てきた蜘蛛に、足の指に糸を絡まれる。糸を切り株に巻き付けたら切り株が淵の中へ。魚を入れた竹かごをみると、魚が枯れ木の枯れ枝になっていた。
『天狗の腰掛け石』
天狗に毎夜、空を飛ばせてもらう男。天狗が「赤飯をつくって持ってきてくれ。誰にもこのことを言うな」と言う。男は妻に空を飛んだ話をするが、信じてもらえない。赤飯もつくらなかった。天狗は二度と来なかった。
******************
……以上が、地元の3つの、滝にまつわる伝説です。コピペじゃなくて(ソースがウェブにないっぽいので)、かなり端折って説明しました。民話の構造が、ちょっとプリミティブなかたちで残っているんですよ。なので、マイナーな伝説。ナメリガフチ伝説以外は、町で知ってるひと、あまりいないのですが、紹介がてら使わせてもらいました。いつもいろんな方にご迷惑をかけてしまい、すみません。では、また。