第17話 賢い猫 vs 罠
文字数 1,967文字
雨の日は退屈だ……。
いつまで経っても止まない雨は、おれたちのいる緑地公園にもしつこくつぶてを放ち続けている。
愉快そうに笑って、シッポを揺らすイザベラ。
それを見て安堵したのか、子どもたちは元気な声を張りあげる。
捕獲器は、公園のトイレの裏側に設置されていた。
数は2つ。
そのどちらにもキャットフードが入っている。
ニオイから察するに、猫オタの家で食べたものと同じような粒状のモノや、魚のすり身のようなモノが入っているらしい。
イザベラは以前、ジロリ組との抗争に不参加だったことに対し、引け目を感じているようだ。
おれの視線は捕獲器へと移る。
はじめに人間が設置したものとは、構造がやや異なるようだ。
最初の捕獲器は、踏み板式の置きエサだった。
しかし今回は違う。
キャットフードがこんもりと詰まった袋が、上からぶら下がっているのだ。
幸いそのエサは、トイレの屋根のでっぱりのおかげで雨水に浸ってはいない。
一定の鮮度は保たれているようだが……
雨に打たれながら、イザベラはやや早足で捕獲器のほうへ向かっていく。
その体が捕獲器へ近づくと、行動は慎重になった。
まずは隈なくスメルチェック。
次いでじっと目を凝らし、集中を保ったまま内部をじっくりと
調査に時間をかけ、しばらくしてから再びイザベラは動き出した。
前回と同じ要領で、そろーりそろーりの歩調を保ったまま、囲いの中へ足を踏み入れる。
とはいえ、期待より不安でいっぱいだ……。
捕獲器の中を移動中、イザベラはそっと片手を上げた。
目の前には、金具にぶら下がっているキャットフード入りの袋がある。
それを指先でちょんとつつく。
もう一度、上げたままの前足で袋をたたく。
何かが起きそうで、何も起こらない。
そうは言いつつも、イザベラは様々な感覚を働かせて、周囲を注意深く調べた。
ようやく納得したようにまばたきをすると、キャットフード入りの袋に前足の爪をひっかける。
やや力を込めて、手前にグイと引き寄せた。
ガシャーン!
すべては一瞬の出来事だった。
悲劇が彼女の身に襲いかかる。
けたたましい音と共に、捕獲器の扉は閉ざされてしまった。
イザベラは慌てて袋から手を離す。
が、逃げ道は完全に断たれてしまっている。
そんな……!
イザベラがこのままずっと閉じ込められてしまうなんてっ!
おれは全速力でイザベラのもとへ走った。
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