第133話 父猫さんは意識が高め?

文字数 1,963文字





 部屋に戻ると、子猫たちのジャンプの特訓の始まりだ。



みんな、跳ぶ前にしっかり集中するんだぞ



ミィー!


ミャー!


ミャアー!


ニィー!



返事はちゃんと「はーい」と答えなさい


メデアお姉さんやイソルダお兄さんはきちんと返事をしていたのだから、良いところは見習うのよ



はーい


はーい


はーい


はーい



よし、いい子だ。

それでは、特訓開始!



がんばるミィー!



はげむミャー!



やってやるミャアー!



はりきるニィー!




 子猫たちはそれぞれ勇み立って、ターゲットに跳びかかる。



 目の前にはケージがある。

 


 目標は、そのケージの上に跳び乗ることだ。



 けれどもうまく跳べず、おしりがぴょんと上がっても、高さが足りずに小さな体が途中でコテンッと落下し転がってしまう。



 失敗に次ぐ失敗の繰り返しだった。







まだ跳躍ひとつで全身を跳び上がらせるほどの筋肉が育っていないのね


あの様子じゃ、小さめのケージだろうとダンボール箱だろうと、跳び乗るのは難しいわ



たしかに難しいが、体を動かすことにどんどん慣れさせていったほうがいい


とにかく動きまわることが運動神経の良い子に育てる秘訣なのだからな



あなたが幼かった頃のように?



ああ。子猫の頃のほうが、好奇心旺盛というか恐れ知らずというか、なんでも夢中になりやすいだろう?


活動的なうちに運動させて筋肉量を増やしておけば、基礎代謝も上がって、将来の肥満予防にもなる。

じつにいいことずくめだ



肥満予防か、なるほどねぇ


メデアとイソルダが生まれた頃は、そんなこと気にもしていなかったわ



あの頃はエサの確保で大変だっただろうし、おれのような協力者がそばにいなかったのだから仕方がない


気に病む必要はないさ



ありがとう、あなた。

子どもたちのためにも、健康的な身体作りを心がけるわ



うむ。

ファーマが言うには、猫は一度太ると痩せにくいらしい


元々猫は持久力があまり高くなく、長時間の運動を避ける傾向にある。

そのため脂肪が燃えず、痩せにくいそうだ



たしかに、数分間ちょっと動くだけじゃ効果が出にくいわね



できれば、痩せるための運動は20分以上が望ましい



けれど、世の中には梃子(てこ)でも動かない猫もいるわよ



そういう場合は、やはり食い物の量を減らすのが手っ取り早いだろうな


食事量が減ると猫の不満が増幅するだろうから、量を減らすときは少しずつにしたほうがいいとは思うが



わたしもダイエットしようかしら



する必要などないではないか



でも、スラッとしている体型に憧れるわぁ



スリムなのも美々(びび)しいが、イザベラはそのままがいいな



え、どうして?



どうしてって……、

体がくっついたとき、ムニュッとする感じが好ましいというか……



ヤダもう、恥ずかしいわ……




 はにかんで目を伏せると、子どもたちが足を止め、イザベラのほうを振り返った。



ママ、どうしたのー? 


困ってるのミャー?



なんでもないわよ



パパも様子がヘンだミャアー


ソワソワしてるニィー



ハハハ、気にするな


それより、みんな突っ立ってないで、もっと走れーっ!



は~い


は~い



ダラダラ走るんじゃなく、所々でスピードを上げるんだぞ~!



は~い


は~い




 子どもたちは返事をすると、室内を四方八方に走り出した。



 走るというよりは、ぴょんと跳びながら移動する感じに近いかもしれない。



ふふ。

あどけない動きが微笑ましいわ



ああ



あなたが子どもの遊びにつきあってくれるおかげで助かるわ



つき合っているというか、単純に楽しいぞ


元々こうやって面倒を見たりするのが、性分に合っているのかもしれないな




 元気に動き回る子猫たちを見つめていると、ふっと笑みがこぼれた。





ども~!

作者の代理を務める、アイ・キャットで~す!

話を書いている途中で区切ったら健康促進の話みたいになってしまったので、ついでに小話でもしようかと思い、需要無視で登場することにしました



猫の肥満は、飼い主さんにとって悩ましい問題の一つですよね。

うちも結構気にかけてます


たいした案ではありませんが、我が家では猫のゴハンをラックの上に置いています


ラックの高さは約1メートル。

ジャンプして跳び乗らないと、ゴハンを食べることもできません


もとは他のニャンコさん(食物アレルギー持ち、あまり運動神経のよくない)が、同じゴハンを食べないようにするための配慮によるものでした


ところがこれはこれでちょっとした運動にもなるし、床に直置きするよりいいかな(猫同士が騒いでぶつかったりする)と思い、子猫の頃から続けているのです


当事者からしてみれば、太りすぎたらゴハンが食べられなくなるかも……と、心理的な圧がかかっているかもしれません


実際どう思っているかはわかりませんが、ニャンコさんたちは不満鳴きすることもなく、毎回ぴょんと跳んでゴハンを食べてくれています



老猫さんや運動が苦手な猫さんにはオススメしませんが、参考になれば幸いです



それでは皆様、ごきげんよう~












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登場人物紹介

紅 

ねこねこファイアー組の元ボス猫。

亡き友人であり部下でもあったオス猫に、妻のイザベラとその子どもたちを託され、結婚することになった。

夫婦仲は良好で近々子ども産まれる予定だが、生活は苦しく、落ち着ける居場所を求めている。

ワケあって住処を離れることとなったので、家族と共に町へ向かうが……。


イザベラ 

紅の妻。メデアとイソルダの母猫。

メデアとイソルダは、亡き夫とのあいだにできた子ども。亡き夫はねこねこファイアー組の幹部のひとりだったが、ニャニャ丸組との抗争により深手を負い、他界した。

知性的な猫であり、ドアノブに手を伸ばして開けることもできる。

メデア 

紅夫婦の娘。

生まれたての頃は甘えん坊だった。弟に冷めたツッコミを入れることが多いが、逆にからかわれることも。

紅が父猫になるまではボスとして遠巻きに眺めるだけだったので、なかなか同居になじめなかったが、共に行動することで次第に心をひらいてゆく。

イソルダ 

紅夫婦の息子。

幼いころから体つきが丸く、運動嫌いが拍車をかけ、筋肉量の少ない体形はぷよんとしている。

スコティッシュフォールドのミックスだった父猫の影響を受け、片方だけ折れ耳。

口癖に「ニャウ」を多用する。調子に乗って姉のメデアをからかい、反撃を浴びることもしばしば。

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