第38話 ネコ遊び ≪後編≫
文字数 2,599文字
おれにネコじゃらしを押さえ込まれて、驚きつつも喜ぶ猫オタ。
一時的に手を
猫オタはそれを握り直すと、右へ左へ、金属フレームの表面をなぞるようにすばやく移動させはじめた。
おれはネコじゃらしの移動に合わせて
ピシャリ、ピシャリ!
白い穂先を何度も狙い打ちする。
猫オタはオモチャの動きに変化をつけた。
ケージの外側からネコじゃらしを出したり引っ込めたりと、穂先をランダムにのぞかせる。
拳をくり出すと、
動物の毛にも似たフワフワした繊維を、深く鋭く突き刺す。
おれは爪を引っかけた状態をキープし、ネコじゃらしを自分のほうへ引っ張る。
最後のひと押しで、猫オタの手からつるんとスティックが抜けた。
――勝ったな!
絶好の機会を逃さず、おれは猫オタからネコじゃらしを強引に奪い取る。
子どもたちから飛び交う歓声。
父として、とても誇らしい気分だ。
勢いづいたおれは、ネコじゃらしの先端を口にくわえた。
狩りのときのような本気モードでアゴにグッと力を込める。
ブチッ!
ネコじゃらしは、敗れた。
おれの力の前に、はかなくも散った。
スティックと穂先、バラバラになった2つのパーツが足元に転がる。
猫オタは、おれが足元に落としたネコじゃらしの穂先を指でつまんだ。
それを拾い上げ、まじまじと見つめながら荒い鼻息をつく。
秒でホウム……?
何を言っているか、サッパリわからんが、
そうやって「ニャン」と返事をしてやると、猫オタはまたしても感涙した。
そこへオーハラが2階に上がってやって来た。
再び丸くなるイザベラのそばに行き、おれはその場にしゃがみ込む。
その頭上から人間たちのやり取りが聞こえてきた。
猫オタとオーハラは世知辛い世の中を嘆くかのように、しみじみと語り合っているようだが……。
そうしてしばらくのあいだ人間たちの話を聞き流すことしかできないおれたちだったが……
ふと壁の向こう側に気配を感じた。
それは人間では察知不可能な、猫にしか聴き取ることのできないレベルの音だった。
ふっとそちらへ視線を移してみれば、
ドアの隙間から、少年猫・
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