第22話 敵対する心
文字数 2,489文字
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ウゥゥゥゥゥと唸り、突然現れた人間の女へ怒りの咆哮を放つ。
相手はおれを軽くあしらって、こちらを凝視しすぎない程度に見つめてきた。
微笑みを交えて、中年女性は温和な口調で言った。
しかし子どもたちも相手がイザベラを連れ去った人間だと気づいて、すでに威嚇モードに入っている。
一方猫オタは……
中年女性は申し訳なさそうな表情をおれたちに向けてくる。
その顔に跳びつく勢いでおれは牙を
恐怖心を内側に隠して、精一杯の虚勢を張る子どもたち。
その内面を見透かしたように、相手は
母猫が恋しくなった子どもたちは、興奮状態から冷めたようだ。
逆立っていた毛はボリュームダウンして、好戦的なトゲトゲしさが瞬く間に失われる。
思い立ち、自転車の前カゴから跳び下りる。
するとさっそく猫オタが反応を示した。
猫オタは地面に降り立ったおれを捕まえようと、手を伸ばしてくる。
その手をよけると、猫オタは傍らにいるお巡りに訴えた。
男はうろたえた様子で背を向けると、小走りで傾斜を駆けていく。
そそくさと坂の上に停車している車に乗り込んだ。
子どもたちはきちんと指示に従ってくれた。
道路の隅を小走りで駆けつつ、おれのそばに寄ってくる。
猫オタは自転車をその場に置き捨て、距離を縮めようとした。
おれを先頭に、追いかけっこのはじまりだ。
子どもたちも一緒に親子で足並みをそろえて高速移動すると、人間たちとの距離がみるみるひらいていく。
中年女性は、得意げな様子で腰まわりの前掛けからスティック状の小袋を取り出した。
猫ならば聞き逃すことのできないキーワードを耳にして、思わず足が止まる。
食欲に火をつけられ、視線を逸らせない。
両足はすっかり魔性の糸に絡められてしまったように動かなかった……。
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