第60話 家族のんびりぬくぬくタイム
文字数 2,090文字
ぼんやり
太陽はいまにも消えそうで、なんとなく心もとない。
けれど窓辺に差し込むかすかな光の熱に頼らずとも、充分な暖かさが感じられる。
みんなで団子になってのぬくぬくタイム。
昨日の夜に言った、
「昼間ゆっくり寝よう」という約束どおり、家族密着しながらの
パチリと目を開け、軽く両腕を伸ばす。
メデアとイソルダは、目を覚ますとあくびをした。
それから寝ころんだままボーっとした顔を宙に向ける。
そしてまた眠そうに、大きな口を開ける。
大あくびしてから、メデアがちょっと恥ずかしそうに言った。
メデアは起きて伸びをするが、イソルダは動こうとしない。
イソルダは、背中をイザベラに当てていた。
おれの体には、前足をギュッと絡めてしがみついている。
ほどよい暖かさにつつまれていると、その居心地の良さから離れたくなくなるのもわからなくはない。
おれが撫でるように触れてやると、イソルダはとてもうれしそうに喉を鳴らした。
甘えるという言葉には裏も表もないはずだが、なぜか頭に愛の営みが浮かんでしまった。
反応から察するに、イザベラも同じ状況のようだ。
話題を変えなくては――と思い、少々焦り気味に視線を動かす。
たまたま目についたイソルダの腹に着目し、話を振った。
イザベラの言うように、当時では考えられないほど日々飽食だ。
泥水をすすって飢えをしのいでいた頃が遠い昔に感じられる。
さりげなく促してみたが、イザベラは困ったようにうつむいてしまった。
会話が止まったあたりで、下の階から大きめの鳴き声が響いてきた。
と、ヤツの名が出たところで――
タイミングよく、誰かがおれたちのいる猫部屋のドアをこすりはじめる。
やって来たのは、ファーマだった。
イザベラがドアを開けると、ファーマは元気そうな顔をのぞかせる。
ファーマは部屋へ入っておれたちのほうに寄ってくると、やや慎重な口ぶりで言った。
言うまでもなく、いい予感はしなかった。
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