第117話 老害様は偽りがお好き
文字数 2,396文字
しばらく時が流れ――
ついにメデアとイソルダの里親候補者が絞られた。
今日その候補者が『マジカル・ニャワンダ』にやって来た。
出迎えたのは、オーハラとトラヒコだった。
おれはリビングの壁際からそっと顔をのぞかせて、その様子を監視する。
途端にオーハラをはじめ、トラヒコもくるりと身をひるがえす。
ニッコリ微笑む相手とは対照的に、その顔は動揺でいっぱいだ。
オーハラたちは再び訪問者に向き直って、疑問を投げかける。
階段側にいるファーマがイラ立たしげにツッコミを入れる。
チラリと目をやると、そのそばにいるアカリ婆とヒカリ爺も呆れた顔で訪問者を見ている。
ひきつった笑みを返しつつオーハラが顔を後ろへ向けると、トラヒコが声をひそめてたずねる。
おれは廊下に出て、オーハラたちに主張する。
が……
オーハラはおれをなだめつつ、渋々の態で訪問者たちを家にあげてしまった。
リビングには、メデアとイソルダがいる。
メデアの指示のもと、イソルダは姿勢を正すと前足をキレイに伸ばした。
ふたりはキャットタワーに並んで佇み、やや緊張した面持ちで、接近する訪問者たちを待ちかまえている。
首に下げたカメラを手に、カシャカシャ撮りはじめる。
おれが不機嫌なのを察したのか知らないが、
オーハラとトラヒコが止めに入ってくれた。
オーハラが片手でおれをさし示す。
男の落ちくぼんだ目がこちらへ向けられる。
ファーマは人がシッシッと手を振るように、シッポを振って嫌悪感をあらわにした。
おれは子どもたちのもとへ行き、無事かどうかを問いかける。
子どもたちのそばに佇み、訪問者の男を睨みつける。
視線の先で、人間たちは座卓を囲んで座っていた。
それから間を置かずに話し合いとなった。
ビミョーな空気に包まれながらも、やり取りは続く。
何を思ったか、里親候補者の男は高々と拳を掲げて歌いはじめた。
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