第63話 オーハラの苦悩
文字数 2,105文字
理不尽な夜は続いている。
おれにかけられた疑いは、いまだ晴れずにいる。
オーハラはあの後、帰宅したトラヒコに不満をこぼした。
トラヒコはソファーに座って、沈んだ顔のオーハラに微笑みかける。
トラヒコは同意しかねるように、眉根を寄せたままでいる。
目元を拭いながらオーハラは答える。
泣いているのだろうか……?
酒というキーワードが出たので捕捉すると、オーハラは割れたグラスを片づけた後に、妙なニオイのする飲み物をおかわりしていた。
おそらく、あれが酒だろう。
どれくらい飲んだのかは知らないが、おれの耳はコップに二度ほど液体を注ぐ音をとらえている。
オーハラは室内を見回し、キッチンに向かって声をかける。
オーハラが呼びかけると、
キッチンで食事を摂っていたアカリ婆とヒカリ爺が、さっそく反応して駆けつけてきた。
オーハラはふたりをソファーの上に乗せて、それぞれの顔や体を撫でる。
高齢犬たちは、みるみるご機嫌モードだ。
ファーマは、オーハラを見上げながらゆっくりとまばたきをする。
親愛の気持ちがこめられた仕草だ。
それを受けてオーハラは微笑むと、ファーマの額にそっと手を触れた。
たった少しの触れ合いでも彼女の身体からストレスが消え、癒しの衣につつまれていくのがわかった。
トラヒコは身を乗りだしてファーマの頭をよしよしと撫でると、ソファーから立ち上がった。
トラヒコがおれを呼びながら廊下の近くにやって来る。
おれはその廊下沿いにある階段から、彼らの様子を
しかし向こうからは、おれの姿は柵に隠れて見えていないはずだ。
すでに家族には、事情を話して伝えてある。
行くべきか、行かざるべきか――
階段に
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