第119話 オタ様は被害妄想に悩む
文字数 3,763文字
謎の女が玄関に入ってきた。
おれの疑問を解消するように、オーハラとトラヒコが謎の女をあたたかく迎える。
女の着ている服に目を留め、オーハラが言う。
簡単な自己紹介が終わると、里親候補者の女は二人に案内されてリビングへ入っていく。
その途中、おれとすれ違うと、
女は、ねっとり絡みつくような視線を向けてきた。
こんな人物が里親候補者だとは……。
女はリビングに入ってメデアとイソルダを見た途端、甲高い声をあげてはしゃぎ出す。
ジャレつきたくなるが、子どもたちもいるし、ここは我慢のしどころだ。
かわいいと言われると、メデアはご機嫌だ。
そこはメス猫らしいというかなんというか。おれの知る限り、かわいいと言われて心底不愉快になる女子はまずいない。
里親候補者の女は、視線を子どもたちに固定したまま、隣にいるオーハラへ問いかける。
それから座卓を囲んで腰を下ろし、話し合いになった。
オーハラは相手に戸惑っているのか、やや遠慮がちに質問を投げかける。
女は言い淀んでうつむくが……
すぐハッとしたように顔を上げ、口をひらく。
急に女がオドオドしはじめる。
オーハラが率先して立ち上がり、女を洗面所へ案内する。
おれはひっそり歩を進めて、そのあとを追いかける。
案内を終えたオーハラが洗面所から廊下へ出てくると、おれは入れ替わりで中にサッと跳び込んだ。
女はトイレに
ほどなくして、ドアの内側から呪いみたいな
やがて鼻をすする音までも聞こえてくる。
おれの脳内に、さまざまな食物が浮かんでくる。
ひと時のあいだ洗面所に佇み思案していると――
突如ドアがガチャリと押し開けられた。
女は着衣をヒラヒラさせながらおれのほうへ寄ってきて、床の上にしゃがみ込む。
女はとうとう感情をむき出しにして
おれには相手の言うことはほとんどわからなかったが、何かを非常に悲しんでいることだけは感じ取れた。
しかし、どうにも同情を寄せる気にはならない……。
おれは相手を冷ややかに
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