第96話 モヤモヤニャンズ
文字数 2,634文字
ツートンに絡まれたみつきを助けに行った、あの日の出来事以来、おれは不機嫌だった。
家の外からトラヒコが呼びかける。
車が走り出す音が聞こえると、オーハラは玄関を去ってリビングへ移動する。
おれはそのあとをそろりそろりとつけていた。
無性に腹が立って仕方がない。
日々養ってもらっている恩があるから牙を
先日、ツートン・ゼロから聞かされた言葉は衝撃だった。
それ以来、オーハラたちへの不信感が募って、どうにも解消できずにいる。
いまのように怒りが沸々と
始終煙に
そばにみつきが寄ってきた。
数日前の一件以来、みつきはやけにおれにくっついてくる。
キッチンに立つオーハラの後ろ背を睨みつけながら、爪を噛んでいると、
話しかけられたので視線を向けたが、みつきは
会話のない部屋に、ジャーッとオーハラが洗い物をする水音だけが響く。
そこへファーマがやって来た。
ファーマは廊下を歩いてリビングへ入ると、ダイニングテーブルの横にある椅子の上へぴょんと跳び乗る。
おれはそれを見上げて反論する。
2階にいるイザベラやメデアとイソルダたちに聞かれたくない話なので、声を落としてはいる。
が、オーハラがガチャガチャと食器洗いをしているおかげで、さほど周囲に気遣う必要はなさそうだ。
声を弾ませるみつきとは真逆に、ファーマは年長らしく説教めいたことを言ってくる。
プイっとそっぽを向き、おれはその場から走り去った。
目的もなく、ただ闇雲に廊下を疾走していく。
その後ろをみつきが追ってきた。
率直な感想を述べると、みつきは機嫌をあからさまに良くする。
みつきとふたり、走ることに没頭して床を蹴っていると、メデアとイソルダが階段を下りてやって来た。
おれは足を止め、
みつきはおれにゆっくりと背を向けた。
その表情はさきほどと打って変わって、
おれは小首をかしげ、トボトボと去っていく彼女の
やがて夜になり、虫の
玄関ドアを開け、まずは
外にはトラヒコや猫オタもいるようだが……
庭の横に止めた車の付近で、まだ何かをやっているらしい。
桃寧が語りはじめた矢先のこと。
猫オタが大粒の涙をこぼしながら、玄関に飛びこんで来た。
おれは人々には近づかず、階段付近でそれを見ていた。
たしかにニオイが違っている……。
猫オタの体からは、普段とはまったく異なるニオイが漂っていた。
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