輝き(執筆者:星野 リゲル)

文字数 968文字

それはまるで、ペンキを塗ったかのように青く澄みわたった空だった。
 以前ヒューマニーにおいてシェロとマキナが空戦を繰り広げたその一帯、今日は以前よりもさらに青々としていて鳥たちの鳴き声は一切聞こえていなかった。

 風もない。ただその場の空気が何となく清らかで澄んだ匂いが漂っているのみであった。

 瞬間、エメラルドに輝く何かが空を切り裂いた。竜である。
 カルナとは比較にならない程、巨大であり、その佇まいに一点の曇りもなく、鱗の一枚一枚に秘められた威圧感はまさに、芸術的センスさえ持ち合わせていた。
 眼つきは鋭くも何かを守り抜く意思の強さを象徴しているようで、決してただ破壊的ではない事を物語っていた。
 その竜が、何かに向かっている。

 地の底から響くような恐ろしい呻き声をあげながら直進する方向には人影があった。

 いや、それは人か?

 上空数百メートルに生身で静止しているのだ。人であるはずがない。それに全身から目を背けたくなるほどの威圧が発せられている。

 この世の全てを握られているような良くない感覚。間違えない、神だ。
 その神に、竜はためらう事無く突撃して行く、その神々しさ。

「血迷ったか……神に逆らう転生者め……どんな道を辿るのか教えてやろう」

 神は、竜に向かって手をかざすが、それを見ても躊躇うことなく竜は、神に向かって突撃している。

 一瞬の出来事であった。神の手から発せられた眩い光は、竜を直撃した。
 地割れのような叫び声と共に、血しぶきが空中に舞い上がった。

「思い知ったか。ただの人間が、竜の仮装なんかしやがって」

 見るとそこには、今までの竜の姿はなく、人間が口から血を流して空中に静止していた。

「神よ、世界分断など起こして何を面白がっているのだ。今すぐ俺たち転生者で遊ぶ事は終わりにしろ!」

 竜化の能力が解けたとみられる、人間は神に向かって叫んだ。

「たかがドラゴン化の能力を手にしただけで、随分と生意気になったものだ。トウラよ」

 その瞬間、神は姿を消した。トウラと呼ばれた人間の背後に回り込んでいたという訳だ。

「っ!………しくじったか?!」

「散れ、俺に盾つく哀れな転生者よ」

 神の無慈悲な攻撃により、トウラは地面へと叩き付けられていった。
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