アザミ《執筆者:KAZU》

文字数 1,822文字

 シェロは昨日、深海和尚に言われたことを考えていた。今、彼女は、深海和尚から一人一人の修行のメニューを伝えられている。その中で彼女の気に留まったのがトウラの修行の内容だった。

「ちょっと待って。これ、修行なのかしら?トウラと白虎を森で歩かせるなんて、これで魔素を操るの?」
「そうじゃ。この建物がある森は広い。だから道に迷うと戻ってこれんのじゃ。もし、トウラ殿の魔素が順調に機能しているのならば戻ってこれるのじゃ。まあ、トウラには伝えてないがのう」
「え!?じゃあもし機能してなかったらどうなるのよ!?

 シェロは焦って深海和尚に詰め寄る。もしトウラの魔素が機能していないなら・・・トウラは永遠に森を彷徨うことになる。それは嫌だった。

「まあ、そう心配するでない。制限時間の10分後にワシが回収する」
「本当に?だったらいいわ」

 深海和尚は短くそう答える。シェロは安堵の表情も見せる。

「後は、シュートとノアの模擬戦闘、シオンは和尚と一緒に魔素の訓練。それで、アザミとフリージアは私が面倒みるのね」
「任せたぞい。あとはアザミとフリージアをあまり質問攻めにしないことじゃ」
「・・・わかったわ」

 シェロはこう答える。理由は以前深海和尚に言われた通り、相手の深層心理に達するからだ。彼女は気になっていたことを深海和尚に問う。

「和尚、私にはなぜ先を見る能力があるのかしら?」
「なにかそれについて自覚している部分はあるかの?」
「特にないわ。ただし、仲間からは作戦を立てるには必要やら作戦を立てるのが上手なんて言われるけど」
「それじゃ。それは、先を見る能力が知らないうちに作用しているかもしれぬ」
「えっ?それなの?」
「うむ」
「それは、何なの?」
「いや、詳しくは答えられん。わしは知っとるがのう」

 深海和尚はまた答えをはっきり言わない。

「まあ、そんな顔をせんでもよかろう」

 知りたいことをうやむやにされ、シェロは残念、不安、納得がいかない。そんな顔をしている。シェロもまた、普通の人間とは違うのだろうか?はたまた、それは異能なのだろうか?

「じゃあ、わしは早速シオンの修行の相手をしに行こうかの」

 と言い、深海和尚はゆっくりと部屋を後にした。

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「シェロ殿、アザミ殿とフリージア殿は何かを隠しておる。それはわしにもよくわからぬが、もし謎が解けたらば、お主らの道は大きく開けるじゃろう」

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 今、アザミとフリージアはシェロの目の前にいる。

「こんにちは、私はシェロよ。こうやってゆっくり話すのは初めてかしら?よろしくね」
「ボクはアザミ」
「私は・・・フリージアです」

 シェロが笑顔で挨拶し、アザミとフリージアは自己紹介をした。フリージアは若干言葉に詰まっていたが。そしてしばらく雑談めいたものが続いたが、ここで本題に入る。

「アザミちゃんは、どんな子なの?ほら、得意なこととか、
あるでしょ?」
「教えない」
「どうしても?」
「仕方ないなあじゃあ、特別に技を見せてあげるよ」
「技?」
「うん」
 アザミは返事をすると立ち上がり、右手を出した。するとそこから魔法陣のようなものが出現した。

「え?何なの!?あれ?」
「アザミくん!?

 シェロもフリージアも初めて見るアザミの技に驚愕する。そして、アザミの手から魔法陣が消えた後に手に残っていたものは紙とペンだった。

「ほら、シェロ書いてみてよ」

 シェロはアザミから受け取ったペンで紙に線を書く。紙とペンは本物だと分かり、この質問をする。

「これは、移動してきたというの!?
「うん」

 アザミははっきりそう言った。紙とペンが瞬間移動してきたということだ。

シェロは思った。この手から魔法陣を出して物を移動させるアザミとは一体何者なのだろう?そして何を隠しているのか?それは極秘事項なのか?シェロの頭の中には無数の疑問が浮かんでくる。次に、フリージアに話を振る。

「フリージアちゃんは?何かある?」
「私、何も覚えてなくて、気が付いたらここにいたの」
「え?」

 ―――記憶喪失―――

 この4文字がシェロの脳内をよぎる。

 シェロの思考は行き場を失った。どうしても深海和尚のいう能力のことが気になるが、その後は気にせずアザミとフリージアと一緒にシェロは元気に遊ぶのだった。
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