黒十字軍    後編(執筆者:横澤 青葉)

文字数 1,198文字

「じゃあ、今日のスケジュールを発表します!」

シオンが船長なのでこういったものも船長の役割である。

「地図かける人!」

「……多少」

シオンが聞くと、1人の男性が手を挙げた。

「ざっとでいいから、地図をお願いします!」

「……はい」

「次、土木関係の事ができる人は、海岸近くの3ヶ所に適当でいい、崩れないように見張り台を! 食料をとっていく人と僕達の開拓する人に別れます! トイレはこの船の中にありました!」

「……トイレは必要?」

「うんうん」

シェロに突っ込まれたが、トイレは重要だと思う。

「日が暮れる前に帰ってきて下さい!」







外に出ると、小型の巡洋艦が1隻、隣に置いてあった。 今回はその巡洋艦の中を調べてから、シオン達が乗っていた──そう、戦艦の中も調べることにした。
しかし、どうしたいのかがイマイチ分からない。 その『黒十字軍』だ。

「うーん……分からないわね」

聞いてみると、シェロにもそう言われた。

「たぶん、どこかのくにのえんしゅうとかっすかね?」

リシュリューはそう考えた。 幼いのに頭がよく回る子だ。

「確かに、あるかもな、それ」

カーボベルもそれには同感であった。

「それにしてはやりすぎじゃない? 最新鋭の兵器なんて持ち出しちゃって」

「うーん……そうなんっすよね」

リシュリューは船内の地図を書いているのだが、ペンが勝手に動いているようで怖い。

「……まさか──」

「シェロ? 心当たりとかあるの?」

「いや、大丈夫よ」

シオンの問にシェロはそう返した。
しかし、シェロの考えていたことが当たっていることなど、今は誰も知らない──




2日目から8日目は、戦闘力のない人たちのための射撃訓練である。
まぁ、その他諸々もあるが。
その間に、シオンは作戦を作り終わっていた。

「……誰も『死なない』ようにするのね。 あなたらしいような気もするわ」

シェロはシオンが作戦を見せると、クスッと笑っていた。

「頑張るから期待しててね、シオン船長」

「冷やかさないでよ……」

「ふふ、ごめんごめん」

シェロは完全に後衛任務である。 シオンは戦艦の操縦である。燃料タンクには魔法がかかっていて、使うことが出来なかったのだが、作戦当日には使えるようになるらしい。







「と、いうことよ。気合い入れて行きましょう!」

9日目の夜。

シオンが作戦を告げた後、シェロはそう言った。

最初は弱音しか吐いていなかった40名は、今では盛り上がっていた。 建前だけかもしれないが。

シェロはシオンが決め台詞を言おうとする前に、決め台詞をシオンから奪い取るようにしっかりと吐いたのであった。

「全員、生きて帰りましょう」
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