再びの空へ 前編(執筆者:金城 暁大)
文字数 2,172文字
「ヒャッホー!」
トウラは、ルノーの後ろにけん引された小型機の複座ではしゃいでいた。
「竜≪ドラゴン≫になって飛ぶのもいいけど、この飛行機ってのもスリルがあっていいなぁ!」
「騒ぐなトウラ!墜落したらどうする!」
「大丈夫だって!そしたら俺が助けてやるよ!風が気持ちいいー!空が近いー!」
はしゃぐトウラを他所に、シオン達3人ははらはらしながら飛行を続けていた。
シェロの言っていた通り、離陸は問題なくできた。
確かに、多少離陸が滑走路ぎりぎりで危なかった所はあったが、そこを除けば特に問題はなかった。
「ね、言ったでしょ?私を信じてって。」
「そうだね……。でもシェロがどんなに上手くても、僕はやっぱりこの飛行機は少し怖いよ。」
その言葉通り、シオンはルノーの複座で鳥肌をたてながら縁にしがみついていた
シオン達を乗せた飛行機は、既にルイドの町を囲む山々を過ぎ去り、広大な草原地帯の上を飛んでいた。
その草原の上で、羊飼いが羊に牧草を喰わせているのが見える。
やがて、草原の向こうから田園が姿を現した。田園を分けるように、陽の光を反射する水路が規則的に引かれている。
その田園の上を撫でるように、飛行機は飛んでいく。たまに何人かの農夫が、田植えだろうか、脇に籠を抱えたまま頭上を飛び去る飛行機に手を振っていた。
「もうすぐでシャールに着くわ。」
シェロは操縦桿を握る方とは逆の手で、ルノワールから聞いていたシャールの場所が示された地図を確認した。その地図で示された通り、進むにつれ、眼下に人が増えていく。
「この辺で良いわね。着陸するわよ!」
シェロは、丁度自分達の進行方向に伸びる一本の道を狙い速度を落とした。
今度は昨日のような派手な着陸はできない。シェロはそう思いながら、慎重に操縦桿を下げた。
地面が段々と近づいてくる。
「うわわわわわ……」
シオンの複座を縁を握る手に力が入る。
話には聞いている。今回のように後ろにけん引している物がある場合、離陸はもちろんのこと、着陸が最も難しいという事を。
それは後ろの二人も知っている。彼らも状況が呑み込めたようで、特にトウラに関しては表情が一変している。
「シェロ!本当に大丈夫なんだろうな!」
シュートの大声にシェロが振り返らずに返す。
「大丈夫よ!しっかり掴まってなさい!」
「その台詞、信じるからな!」
「大丈夫、俺はドラゴン、俺はドラゴン……」
シュートの後ろで、トウラはまるで呪文のようにぶつぶつと自己暗示をかけていた。
やがて、2機の飛行機は地表と触れるか否かという距離まで近づいた。
だんだんと、その距離が縮まっていく。
徐々に……徐々に……そして、
ズン!
機体に大きな衝撃がおきた。
シオンはその瞬間、目を瞑り、死を覚悟した。
だが、痛みはない。
ゆっくりと目を開けると、機体は田園に挟まれた道をゆっくりと滑っている。
「着陸成功よ!」
シェロのその声に、3人は胸を撫で下ろした。
「良かった、助かった……。」
シオンは後ろの2人を見ると、彼らは呆然と中空を見つめていた。
やがて飛行機が停止すると、シェロは何事も無かったかのように操縦席から颯爽と飛び降りた。
「さぁ、シャール村に行くわよ。」
だが、他の3人は全く微動だにしない。
「どうしたのよみんな?村はすぐそこよ?」
「いや、ちょっと……。」
「え?」
「腰が……抜けて……」
「俺も……」
「俺は……違うけど……うっぶっ!オエロエロロロロロエエエ――」
トウラの吐き出した液体は、陽の光を取り込み小さな虹を描いた。
♦ ♦ ♦
シャール村に着いた一行は、早速オウルニムスに聞いた教会を探した。
「確か、レッド・マウンテンズを崇める教団の教会なんだよね?」
「ええ、彼はそう言っていたわ。」
すると、その会話に横を通り過ぎた村人が反応した。
「あんたがたも、教会に御布施かい?」
「お布施?」
「ええ、そうです。」
首を傾げるシオンに革ってシェロが対応した。
「だったらこの道をまっすぐ行くといい。広場を少し挟んで少し大きな教会が見えてくる。この村に教会は、そこの一つしか無いからすぐにわかるさ。」
「メルシー。行ってみるわ。」
すると村人は、シオン達を物珍しそうな目で見た。
「見た所、あんた方は冒険者のようだが、旅の安全の祈願かい?」
「そうよ。何分、旅をしていると危険が多いからね。」
「本当にそうだよな。近頃は転生者が至る所で悪さをしているから、まったくおちおち旅行にも行けないよ。あんた方も、くれぐれも転生者には気を付けろよ?」
「メルシー。そのご忠告、ありがたく受け取っておくわ。」
村人はシェロ達に別れを告げると、自分たちとは反対方向に向かって去って行った。
「ここでも俺は厄介者扱いって訳か。」
シュートはシェロに頷く。
「ここだけじゃないでしょう。今は世界の至る所で貴方達は嫌われているわ。」
「そりゃ嬉しいね。」
「ともかく行きましょう。この先にあるって言っていたわね。」
トウラは、ルノーの後ろにけん引された小型機の複座ではしゃいでいた。
「竜≪ドラゴン≫になって飛ぶのもいいけど、この飛行機ってのもスリルがあっていいなぁ!」
「騒ぐなトウラ!墜落したらどうする!」
「大丈夫だって!そしたら俺が助けてやるよ!風が気持ちいいー!空が近いー!」
はしゃぐトウラを他所に、シオン達3人ははらはらしながら飛行を続けていた。
シェロの言っていた通り、離陸は問題なくできた。
確かに、多少離陸が滑走路ぎりぎりで危なかった所はあったが、そこを除けば特に問題はなかった。
「ね、言ったでしょ?私を信じてって。」
「そうだね……。でもシェロがどんなに上手くても、僕はやっぱりこの飛行機は少し怖いよ。」
その言葉通り、シオンはルノーの複座で鳥肌をたてながら縁にしがみついていた
シオン達を乗せた飛行機は、既にルイドの町を囲む山々を過ぎ去り、広大な草原地帯の上を飛んでいた。
その草原の上で、羊飼いが羊に牧草を喰わせているのが見える。
やがて、草原の向こうから田園が姿を現した。田園を分けるように、陽の光を反射する水路が規則的に引かれている。
その田園の上を撫でるように、飛行機は飛んでいく。たまに何人かの農夫が、田植えだろうか、脇に籠を抱えたまま頭上を飛び去る飛行機に手を振っていた。
「もうすぐでシャールに着くわ。」
シェロは操縦桿を握る方とは逆の手で、ルノワールから聞いていたシャールの場所が示された地図を確認した。その地図で示された通り、進むにつれ、眼下に人が増えていく。
「この辺で良いわね。着陸するわよ!」
シェロは、丁度自分達の進行方向に伸びる一本の道を狙い速度を落とした。
今度は昨日のような派手な着陸はできない。シェロはそう思いながら、慎重に操縦桿を下げた。
地面が段々と近づいてくる。
「うわわわわわ……」
シオンの複座を縁を握る手に力が入る。
話には聞いている。今回のように後ろにけん引している物がある場合、離陸はもちろんのこと、着陸が最も難しいという事を。
それは後ろの二人も知っている。彼らも状況が呑み込めたようで、特にトウラに関しては表情が一変している。
「シェロ!本当に大丈夫なんだろうな!」
シュートの大声にシェロが振り返らずに返す。
「大丈夫よ!しっかり掴まってなさい!」
「その台詞、信じるからな!」
「大丈夫、俺はドラゴン、俺はドラゴン……」
シュートの後ろで、トウラはまるで呪文のようにぶつぶつと自己暗示をかけていた。
やがて、2機の飛行機は地表と触れるか否かという距離まで近づいた。
だんだんと、その距離が縮まっていく。
徐々に……徐々に……そして、
ズン!
機体に大きな衝撃がおきた。
シオンはその瞬間、目を瞑り、死を覚悟した。
だが、痛みはない。
ゆっくりと目を開けると、機体は田園に挟まれた道をゆっくりと滑っている。
「着陸成功よ!」
シェロのその声に、3人は胸を撫で下ろした。
「良かった、助かった……。」
シオンは後ろの2人を見ると、彼らは呆然と中空を見つめていた。
やがて飛行機が停止すると、シェロは何事も無かったかのように操縦席から颯爽と飛び降りた。
「さぁ、シャール村に行くわよ。」
だが、他の3人は全く微動だにしない。
「どうしたのよみんな?村はすぐそこよ?」
「いや、ちょっと……。」
「え?」
「腰が……抜けて……」
「俺も……」
「俺は……違うけど……うっぶっ!オエロエロロロロロエエエ――」
トウラの吐き出した液体は、陽の光を取り込み小さな虹を描いた。
♦ ♦ ♦
シャール村に着いた一行は、早速オウルニムスに聞いた教会を探した。
「確か、レッド・マウンテンズを崇める教団の教会なんだよね?」
「ええ、彼はそう言っていたわ。」
すると、その会話に横を通り過ぎた村人が反応した。
「あんたがたも、教会に御布施かい?」
「お布施?」
「ええ、そうです。」
首を傾げるシオンに革ってシェロが対応した。
「だったらこの道をまっすぐ行くといい。広場を少し挟んで少し大きな教会が見えてくる。この村に教会は、そこの一つしか無いからすぐにわかるさ。」
「メルシー。行ってみるわ。」
すると村人は、シオン達を物珍しそうな目で見た。
「見た所、あんた方は冒険者のようだが、旅の安全の祈願かい?」
「そうよ。何分、旅をしていると危険が多いからね。」
「本当にそうだよな。近頃は転生者が至る所で悪さをしているから、まったくおちおち旅行にも行けないよ。あんた方も、くれぐれも転生者には気を付けろよ?」
「メルシー。そのご忠告、ありがたく受け取っておくわ。」
村人はシェロ達に別れを告げると、自分たちとは反対方向に向かって去って行った。
「ここでも俺は厄介者扱いって訳か。」
シュートはシェロに頷く。
「ここだけじゃないでしょう。今は世界の至る所で貴方達は嫌われているわ。」
「そりゃ嬉しいね。」
「ともかく行きましょう。この先にあるって言っていたわね。」