シュートと剣《執筆者:KAZU》

文字数 1,723文字

「うっ」
「お前弱いな。本当に賞金首かよ!」
「うぁ」

2つの魔法がぶつかり合い、ある男が悲鳴をあげる。

 庭で修行しているのはノアとシュートだ。2人の模擬戦闘はノアの圧倒的優勢で進んでいた。すでにシュートはかなり体力を消耗し、足元のおぼつかなくなっていた。

「最後だ、全力でかかってこい。模擬戦とはいえ、容赦せんぞ」
「うう」

 ノアとの模擬戦とはいえ負けたら命の保証がないかもしれない。ここは、シュートは最後の力を振り絞ってノアの方に向きなおった。

「Light!《光よ!》It's out!《出でよ!》」
「Green shield!《緑の盾よ!》 Fly!《飛べ!》」

 ノアは魔法で光を放ち、シュートは魔法で葉の盾を放つ。だがそれらは相殺され、何もなかったかのように消える。

「ふ、じゃあこれはどうだ」

 ノアはそこに白い剣を体現させた。これは以前見たことがある。白騎士だ。

「じゃ、じゃあ俺も、行くぜ」

 シュートは魔法で剣を体現させた。その黒い剣は緑の鈍い光を帯びている。そして、シュートはその剣を持つ。

「「これで終わりだ!」」

「とうっ!」
「はっ!」

 シュートとノアの剣が交錯する。そして、次の瞬間・・・、

体制を崩したのはノアだった。

「くっ!やるな、お前」
「剣には自信があったんだ。俺の作戦勝ちだな、ハッハッハ」
「お前、バカにするなよ!」

 ノアはそう怒鳴るものの、今の一撃で傷もでき、ひどく体を打ったためうずくまったままで、攻撃はしなかった。そしてノアはその痛みに耐えながらも少しづつ態勢を立て直していく。

「今回はここまでだ。シュートの剣さばきがそこまで強いとはな、今度お前の剣を作ってやる」
「お前、剣を作れるのか?」
「作るよう頼んでやる。魔法に頼るのもいいが、お前は剣を持て」
「うん?分かったよ。今度からそうする」

 シュートは冷静に返事をしたが、剣が使えなくなったため、内心は嬉しかった。ここに、シュートへの新しい剣の制作が決まった。

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 こちらはシオンのいた部屋。八咫烏を携え、深海和尚がシオンのもとにやってきている。シオンの修行は深海和尚が見ることになっているが、シオンはすぐに魔鉱石に変えるため、この手の修行は必要なさそうと思った。深海和尚はこんな話をした。

「お主らの家では鏡は三種の神器の中でも一番大切なものじゃった。そこから『鏡』という名字が来ているのじゃよ」
「ソウダ、ソウダ」
「そうなの?」
「そうじゃ」
「初めて知ったよ」
「なんのなんの、あまりこの名字の由来はあまり語られてないからのう」

 この鏡の中には空間があった。あの大災害以来その鏡はいったい今はどうなっているのか。深海和尚もヒューマニーへ来ているため、元の世界のことは分からない。

「この鏡は頑丈じゃからのう、今どこかで転がっているはずじゃ」

 一通り話をし終えた深海和尚はシオンを連れて屋外のやや広い空間へ移動した。

「さて、準備を始まるかのう」
「何の?」
「ホイ!」

 深海和尚が指を指したその先には鏡の膜があった。

「え?何なの?これ、さっきまではなかったけど」
「今、ここに鏡でできた膜がある。これに魔素を入れるのじゃ」
「マソヲ、イレルト、ニジイロニ、カワル、シオン、ヤッテミロ」
「これに?」
「そうじゃ」
「でもこれ、大きいよ」

 その膜は今までの鉱石とは違ってそれより遥かに大きい。

「いや、お主はだいぶこなれてきてるはずじゃ。まあ、やってみなされ」
「シオン、オマエナラ、ゼッタイ、デキルゾ」
「はい」

 自身がないシオンの返事は弱弱しいものだったが、鏡に全力で魔素を注入していく。そしてどれくらい時間が経ったのだろう。シオンはついにそれを完成させた。

「やった、でき・・・」

 ここまで非常に全力を出し切ったのだろう、シオンはその場に倒れた。

「なに、ちと大きすぎたかの」

 魔素の注入された鏡は水に油を浮かべたようなパステルカラーを展開している。それを背に深海和尚はシオンを建物の中に連れて行くのだった。
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