プロローグ(執筆者:美島 郷志)

文字数 412文字

私がこの国に来て、一番初めの印象は「綺麗な国」だった。見たこともない、分厚い石段がどうやったのかもわからないぐらいの高さまで積み上げられた門に、落ちてくればひとたまりもないような木の杭で組み立てられた柵扉。まばらな大きさの石が敷き詰められている、雨が降れば滑って転びやすそうな通りはたくさんの人でにぎわっている。

 女王の妹だという彼女は、長靴を履いた猫に連れてこられただけの私を快く迎えてくれた。事情を話したら、なんと住む場所や食事まで用意してくれた。そこはテレビの中で見たような、薄い石壁と石畳を引いただけの簡素な作りであったが、なんだか大昔にタイムスリップしているみたいで興奮した。出てくるご飯も、お箸が無いのはちょっとアレだけど、程よく燻されたローストハムの厚切りソテーは、久々のご馳走で興奮した。

 今思えば、そんな優しい世界に、私は舞い上がっていたのかもしれない。

 私は今、真っ暗で冷たい部屋の中にいる。
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