フリージア(執筆者:KAZU)

文字数 1,260文字

 夕食後、シオンとアザミは一緒にお風呂に入っていた。浴室は白色がベースのでおしゃれだが、2人以上は入れないくらい狭い。ここで、2人の中で出た話題は、シオンのここまでの生い立ちだった。

「ねえシオン、君は今までどうしていたの?」
「最初はシェロっていうお姉さんと一緒だったよ。今はいないけどね。その後、シュートやトウラと会って、そのあと、オウルニムスっていう人に出会ったよ。そこでノアを紹介されてここに来た」

 アザミはオウルニムスという言葉を聞いたとき、少し顔つきが動いたが、今はそれ以上気に留めなかった。

「へーそうなんだ。で、シュートやトウラ、ノアはどんな人、詳しく教えて」
「シュートは賞金首、トウラはシュートについて行っていたんだ。ノアも含めて3人はこっちに転生してきたんだよ」
「へえ。で、シオンも転生者なの?」
「彼らの話ではそうらしいんだけど。僕は必要があってこの世界に転生したと」
「だったらそうなんじゃないの?」
「そうかな?さっきから僕ばかり話しているけどアザミは?」
「教えないよ」
「なんで?」
「教えられないからだよ。転生者ならなおさら」
「転生者を知ってるの?」
「昔、聞いたことがある。いつ、どこで聞いたかはわからない」
「転生者ならなぜ教えられないの?」
「僕は秘密なんだ。僕以外には」
「どういうことかわからないよ。ああ、のぼせてきた」

 シオンはお風呂に長時間浸かっていたのと、頭の混乱でのぼせた。その結果、シオンはアザミに抱えられて浴場を後にするのだった。



 そのあと、シオンとアザミは部屋へ戻った。部屋では依然、遺跡の中にアザミと一緒にいた少女が眠っている。ここでもシオンとアザミは話し始める。

「それでさ、アザミ、この女の子は誰だろう?」

 話題は寝ている少女についてだ。この少女はいったい誰なのだろうか?

「知らないよ」
「そうだよね」
「僕が最後に目覚めたとき、君が来た時だよ。その時にいたんだよ」
「それまでは、いなかったの」
「いなかった。だからこっちが聞きたいよ。この子は誰なんだ?」

 シオンは黙り込んだ。少女の正体がまったく分からないのでこの話題は堂々巡りになるだけだと思った。その時、シオンはあることを思いついた。

「そうだ、彼女に名前を付けよう」
「いきなりなにを言い出すの?」
「名前があった方がいい。呼びやすいよ」
「うん。わかったよ。なら、僕の名前を付けた君がつけるんだね」
「うん、フリージアでいいかな?」
「フリージア。いい名前だよー。今度から命名は君に任せようか?」
「いや、たまたまだよ」
「たまたまなのか!」

 そこまで話して、また2人は話が途切れた。シオンはそこで眠気に襲われ、それはだんだん強くなっていく。

「ふぁ~ぁ、今日はもう寝るよ」
「分かった。この子、明日は目を覚ますかなあ」
「分からないよ。おやすみ」
「おやすみ」

 こうして、2人は眠りにつく。
 それにしても、少女は明日目覚めているのだろうか?
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