第56話 使命の願い(3)
文字数 1,477文字
「では、波動を調整しますね」
聖花は、高校卒業後、とあるヒーリングサロンのオーナーとして働いていた。
ワンルームマンションの部屋を、「聖花のヒーリングルーム」として、活動の場としていた。部屋はシンプルな白いインテリアで統一され、アロマオイルの心地よい香りがただよう。
中央にはリクライニングチェアはあり、ここにクライアントを座らせ、施術をしていた。今日はニキビで肌が真っ赤になった女性がクライアントとして来ていた。
「では、癒します」
聖花がそう言い、患部に触れた瞬間、クライアントのニキビ肌がみるみると癒されていた。
「わ、ありがとう! 聖花先生!」
「いいのよ。清く健やかにお過ごしください」
この施術で、五万円をとる。高額だが、母の勧めもあり、五万円から十万円のコースを用意していた。おかげでお金は儲かっていた。
十三歳の時、あやかし神社に行った帰り、こういったヒーリングができるようになってしまった。死んだ父に声も相変わらず聞こえてくるが、このヒーリングの仕事は天職だと言っている。確かにそうだと思う。
医者でも原因不明だった病気が癒やされていくのを目の当たりにすると、不思議な力もあるものだと思う。
盲目の女性の目を癒した事もあった。さすがにこれは難しいと思ったが、聞こえてくる声に従い、施術をした。何故かあやかし神社の森にある土をこね、それを盲目のクライアントに塗ってやったら、目が見えるようになってしまった。
あやかし神社の土に何か力があるとも考えた。成分調査を依頼したが、普通の土だった。
何でこんな事ができたのかは、不明だが、やっぱり神社には、そのパワーがあるらしかった。
「それじゃ、聖花先生。本当にありがとうございました」
「健やかにね」
ニキビが癒やされたクライアントが帰って行くと、聖花はすぐにリクライニングチェアに座る。
まだ若いのにかなり疲れていた。元々身体が弱いせいかも知れないが、ヒーリングをやった後は、かなり体力も精神面も消耗してしまう。
クライアントに感謝される事は、有難いが長く続けられる仕事では無い気もしていた。あの声の主は、天職とは言っていたが、実はそんな確信はない。
「聖花、今すぐ来て!」
そんな事を考えていると、入院中の母から連絡がきた。何故か星花がヒーリングの仕事をし始めてから、母に健康状態が悪化して、入退院を繰り返していた。
こうやって呼び出される事も少なくない。星花はため息をつきながら、母のいる病院に向かった。
病院の最寄り駅には、反ワクチンの団体が騒いでいた。全く興味は無いが、チラシを受け取って見ると、ワクチンで健康を害する可能性も高そうだった。母の健康状態もワクチンの可能性も考えられたが、全くわからない。ヒーラーの仕事をしているので、科学で説明できない事は多々ある気がする。
「聖花、癒して」
母の全身に肌は真っ赤に腫れ上がっていた。ベッドの上で痛みや痒みに悲鳴をあげている。さっそく聖花は施術を試みたが、まるで効果が無い。
仕事では盲目の人を癒しているはずだったが、母の事は全く癒せない。ふと、クライアントの痛みを母に移動させていただけでは無いのかと言う考えも過ぎる。
「なんで、何で癒せないの? 聖花、ママは苦しいよ」
「わからない。わからないよ……」
聖花は、聞こえてくる声に尋ねてみた。心の底で「本当にヒーラーは天職ですか?」と聞く。
『うん、そうだよ。ママを癒すのは、ちょっと難しいだけだからね?』
その声を信じる他無い。実際、クライアントを癒しているのは、事実なのだから。
めでたし、めでたし?
聖花は、高校卒業後、とあるヒーリングサロンのオーナーとして働いていた。
ワンルームマンションの部屋を、「聖花のヒーリングルーム」として、活動の場としていた。部屋はシンプルな白いインテリアで統一され、アロマオイルの心地よい香りがただよう。
中央にはリクライニングチェアはあり、ここにクライアントを座らせ、施術をしていた。今日はニキビで肌が真っ赤になった女性がクライアントとして来ていた。
「では、癒します」
聖花がそう言い、患部に触れた瞬間、クライアントのニキビ肌がみるみると癒されていた。
「わ、ありがとう! 聖花先生!」
「いいのよ。清く健やかにお過ごしください」
この施術で、五万円をとる。高額だが、母の勧めもあり、五万円から十万円のコースを用意していた。おかげでお金は儲かっていた。
十三歳の時、あやかし神社に行った帰り、こういったヒーリングができるようになってしまった。死んだ父に声も相変わらず聞こえてくるが、このヒーリングの仕事は天職だと言っている。確かにそうだと思う。
医者でも原因不明だった病気が癒やされていくのを目の当たりにすると、不思議な力もあるものだと思う。
盲目の女性の目を癒した事もあった。さすがにこれは難しいと思ったが、聞こえてくる声に従い、施術をした。何故かあやかし神社の森にある土をこね、それを盲目のクライアントに塗ってやったら、目が見えるようになってしまった。
あやかし神社の土に何か力があるとも考えた。成分調査を依頼したが、普通の土だった。
何でこんな事ができたのかは、不明だが、やっぱり神社には、そのパワーがあるらしかった。
「それじゃ、聖花先生。本当にありがとうございました」
「健やかにね」
ニキビが癒やされたクライアントが帰って行くと、聖花はすぐにリクライニングチェアに座る。
まだ若いのにかなり疲れていた。元々身体が弱いせいかも知れないが、ヒーリングをやった後は、かなり体力も精神面も消耗してしまう。
クライアントに感謝される事は、有難いが長く続けられる仕事では無い気もしていた。あの声の主は、天職とは言っていたが、実はそんな確信はない。
「聖花、今すぐ来て!」
そんな事を考えていると、入院中の母から連絡がきた。何故か星花がヒーリングの仕事をし始めてから、母に健康状態が悪化して、入退院を繰り返していた。
こうやって呼び出される事も少なくない。星花はため息をつきながら、母のいる病院に向かった。
病院の最寄り駅には、反ワクチンの団体が騒いでいた。全く興味は無いが、チラシを受け取って見ると、ワクチンで健康を害する可能性も高そうだった。母の健康状態もワクチンの可能性も考えられたが、全くわからない。ヒーラーの仕事をしているので、科学で説明できない事は多々ある気がする。
「聖花、癒して」
母の全身に肌は真っ赤に腫れ上がっていた。ベッドの上で痛みや痒みに悲鳴をあげている。さっそく聖花は施術を試みたが、まるで効果が無い。
仕事では盲目の人を癒しているはずだったが、母の事は全く癒せない。ふと、クライアントの痛みを母に移動させていただけでは無いのかと言う考えも過ぎる。
「なんで、何で癒せないの? 聖花、ママは苦しいよ」
「わからない。わからないよ……」
聖花は、聞こえてくる声に尋ねてみた。心の底で「本当にヒーラーは天職ですか?」と聞く。
『うん、そうだよ。ママを癒すのは、ちょっと難しいだけだからね?』
その声を信じる他無い。実際、クライアントを癒しているのは、事実なのだから。
めでたし、めでたし?
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