第48話 平安への願い(3)
文字数 1,748文字
仕事は順調だったはずだった。夫との関係も良かったはずだが、問題が起きていた。
「スピリチュアル好きな婚活女性は、人生上手くいかない」という記事を書いただけだが、その記事がスピリチュアル界隈のSNSで拡散され、炎上してしまった。
仕事のキャンセルも出て、連日身体が重かった。寝ると金縛りにも遭い、スマートフォンやパソコン、洗濯機が壊れた。逆に夫は仕事が忙しくなり、長期出張に出掛けている。助けてくれる人も思い当たらず、星羅はただ悩んでいた。
そんな折、紗央里から電話がかかってきた。別に紗央里とはプライベートでは親しくはないが、事情を全て話した。
「え? 電化製品が壊れたの? これは、サイキックアタックの可能性があるよ」
「サイキックアタック?」
紗央里によると、この現象はサイキックアタックという霊的な攻撃らしい。最初は信じられないが、日本語でいう 呪いや生霊と言われてしまうと、不安になってくる。特に目立つ職業のものは、こういった霊的攻撃にあいやすく、宗教に入り、攻撃を防いでいるという。紗央里が神棚を拝んでいるのも、フワフワしたお花畑な理由でもなく、実用的なものだったらしい。
信じられない部分もあるが、経営者や社長が宗教に入っているのは事実だ。東大出の経営者が、イザベラという悪魔と契約した事があると言っていたのも思い出す。紗央里の話を聞くと、不安が止まらない。
自分はフリーランスだ。とりあえず出社すれば給料が出る会社員とは違う。ビジネスが失敗したら、路頭に迷う事にもなる。借金も背負うかもしれない。夫もいるが、彼も安定した仕事ではない。本当は自分は堅実なタイプで、会社員をやっている時が一番安心できた事なども思い出す。
子供の頃の貧乏状態がフラッシュバックしてくる。貯金は? 国家資格でも取るべき? 老後は? 親の介護は? 出産出来るリミットは? 子供がいなかったら孤独死する? 老後の為に友達って必要? 次から次へと不安で心に満たされ、自分ではコントロールできなくなっていた。まるで、誰かに思考を乗っ取られたよう。
「ねえ、紗央里。このサイキックアタックを解除するにはどうしたらいいの?」
「とりあえず神社行きなよ。さすがに宗教は信じたくないでしょ。私も神社ならいいかなって思って、神棚とか作ってる」
星羅は半信半疑だったが、近所の神社の向かった。あやかし神社という変な名前の神社だったが、しういったものに興味がない星羅はスルーしていた。
鳥居は禿げかけ、色もくすんでいた。なぜか鳥居の近くにキツネが休んでいて、思わず駆け寄ってみる。黄色の麦穂のような色をしたキツネだった。毛はもふもふで、思わず触ってみたくなる。
まるでキツネに導かれるよう、星羅は鳥居をくぐり本殿に向かった。本当は色々と作法があるんだろうが、連日の寝不足で細かい事は忘れていた。
財布の中身を全部賽銭箱に入れ、祈った。とにかく連日のサイキックアタックと言われているものや、仕事への不安について祈る。今は欲しいものは、ただ一つ。心の平安だけだった。
ふと顔を上げると、あのキツネが賽銭箱に座っていた。意外と顔つきは可愛き、思わず背中を撫でる。もふもふな毛並みにうっとりと目を細めるのと同時に、心の不安も消えていた。祈りは聞かれたのかもしれない。
その後、ピタリとサイキックアタックと言われている現象が止まり、ネットでの炎上も終わった。仕事も増え、夫との仲も良好だった。無神論者の星羅だったが、これには信じてしまう。知り合いの経営者や社長には、「霊」のからくりを教えてもらい、それを利用した成功方法も知った。世間のスピリチュアルをハードにさせた感じで、つくづく霊的世界でも搾取する側と奴隷側がいる事にに気づく。
「それにしても、搾取する側と奴隷側ってどういう気基準で決まってるんだろう? スピリチュアル女子は不幸なのに、経営者のスピリチュアル好きは成功するのって不思議〜」
星羅はそう呟きながら、自宅にある神棚の水を取り替えた。その後、パソコンを見るとメールが届いていた。恋愛テクニック本の出版依頼だった。大手出版社で敏腕で有名な編集者の名前もある。
「やった〜!」
星羅は小さくガッツボーツをとっていた。
めでたし、めでたし?
「スピリチュアル好きな婚活女性は、人生上手くいかない」という記事を書いただけだが、その記事がスピリチュアル界隈のSNSで拡散され、炎上してしまった。
仕事のキャンセルも出て、連日身体が重かった。寝ると金縛りにも遭い、スマートフォンやパソコン、洗濯機が壊れた。逆に夫は仕事が忙しくなり、長期出張に出掛けている。助けてくれる人も思い当たらず、星羅はただ悩んでいた。
そんな折、紗央里から電話がかかってきた。別に紗央里とはプライベートでは親しくはないが、事情を全て話した。
「え? 電化製品が壊れたの? これは、サイキックアタックの可能性があるよ」
「サイキックアタック?」
紗央里によると、この現象はサイキックアタックという霊的な攻撃らしい。最初は信じられないが、日本語でいう 呪いや生霊と言われてしまうと、不安になってくる。特に目立つ職業のものは、こういった霊的攻撃にあいやすく、宗教に入り、攻撃を防いでいるという。紗央里が神棚を拝んでいるのも、フワフワしたお花畑な理由でもなく、実用的なものだったらしい。
信じられない部分もあるが、経営者や社長が宗教に入っているのは事実だ。東大出の経営者が、イザベラという悪魔と契約した事があると言っていたのも思い出す。紗央里の話を聞くと、不安が止まらない。
自分はフリーランスだ。とりあえず出社すれば給料が出る会社員とは違う。ビジネスが失敗したら、路頭に迷う事にもなる。借金も背負うかもしれない。夫もいるが、彼も安定した仕事ではない。本当は自分は堅実なタイプで、会社員をやっている時が一番安心できた事なども思い出す。
子供の頃の貧乏状態がフラッシュバックしてくる。貯金は? 国家資格でも取るべき? 老後は? 親の介護は? 出産出来るリミットは? 子供がいなかったら孤独死する? 老後の為に友達って必要? 次から次へと不安で心に満たされ、自分ではコントロールできなくなっていた。まるで、誰かに思考を乗っ取られたよう。
「ねえ、紗央里。このサイキックアタックを解除するにはどうしたらいいの?」
「とりあえず神社行きなよ。さすがに宗教は信じたくないでしょ。私も神社ならいいかなって思って、神棚とか作ってる」
星羅は半信半疑だったが、近所の神社の向かった。あやかし神社という変な名前の神社だったが、しういったものに興味がない星羅はスルーしていた。
鳥居は禿げかけ、色もくすんでいた。なぜか鳥居の近くにキツネが休んでいて、思わず駆け寄ってみる。黄色の麦穂のような色をしたキツネだった。毛はもふもふで、思わず触ってみたくなる。
まるでキツネに導かれるよう、星羅は鳥居をくぐり本殿に向かった。本当は色々と作法があるんだろうが、連日の寝不足で細かい事は忘れていた。
財布の中身を全部賽銭箱に入れ、祈った。とにかく連日のサイキックアタックと言われているものや、仕事への不安について祈る。今は欲しいものは、ただ一つ。心の平安だけだった。
ふと顔を上げると、あのキツネが賽銭箱に座っていた。意外と顔つきは可愛き、思わず背中を撫でる。もふもふな毛並みにうっとりと目を細めるのと同時に、心の不安も消えていた。祈りは聞かれたのかもしれない。
その後、ピタリとサイキックアタックと言われている現象が止まり、ネットでの炎上も終わった。仕事も増え、夫との仲も良好だった。無神論者の星羅だったが、これには信じてしまう。知り合いの経営者や社長には、「霊」のからくりを教えてもらい、それを利用した成功方法も知った。世間のスピリチュアルをハードにさせた感じで、つくづく霊的世界でも搾取する側と奴隷側がいる事にに気づく。
「それにしても、搾取する側と奴隷側ってどういう気基準で決まってるんだろう? スピリチュアル女子は不幸なのに、経営者のスピリチュアル好きは成功するのって不思議〜」
星羅はそう呟きながら、自宅にある神棚の水を取り替えた。その後、パソコンを見るとメールが届いていた。恋愛テクニック本の出版依頼だった。大手出版社で敏腕で有名な編集者の名前もある。
「やった〜!」
星羅は小さくガッツボーツをとっていた。
めでたし、めでたし?
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