第27話 厄年(2)

文字数 1,368文字

 あやかし神社は、妙な場所にあった。

 住所は繁華街の奥にある。繁華街といってもホストクラブやキャバクラが多いところだった。地元民からも評判の悪いところで、滅多に行ったことはない。

 昼間なので、あまり危険な匂いがしないが、キャバクラの外観は見ていて気分の良いものではなかった。「のぞき穴」とかいう単語を見てしまうと、同じ女性としてぞっとしてくる。こういった場所で働く女性の事を祈らずにはいられない。大学で日本文化を専攻していたが、遊郭では気が狂って亡くなる女性が多かったらしい。確かに正気ではやっていられないだとう。

 そんな事を考えていると、自分の不運に嘆いているのはバカみたいな気もしてきた。

 神社は、小さめな公園ぐらいのサイズだった。木々に囲まれているが、近所が風俗街なので、あまり有り難みもない。

 さっそく鳥居をくぐろうとしたら、草むらの方から男女の喘ぎ声がした。

 昼間からドン引きだった。女の方はキャバ嬢のようだが、絹子と目が合うと睨みつけてきた。

「見てんじゃねーよ」

 男の方からは、怒鳴られた。男は、神主の格好をしていて、それもショックだった。清らかな存在だと思い込んでいたが、そうでもない?

 それにしても神社でヤるのって、どういう神経しているんだろうか。神様が怖くないのだろうか。絹子は信じられない気持ちだ。ドン引きする事しかできなかった。

「っていうか、神社の周りってラブホや風俗が多くない? 何で?」

 絹子は、風俗街を後にすると、地元にある公立図書館に向かった。神社の胡散臭さを目の当たりにした絹子は、違和感が拭えなかった。調べてもても良いと思った。

 仕事が決まらなので、時間は余裕がある。働いていた時は、全く図書館などには行けなかったが、今は暇だ。行ってみる事にした。宗教関連の棚をあさり、神社関連の本などを開いてみた。

 確かにスピリチュアル系の本では、神社はご利益があると書いてあったが、そうでも無い本を読むと、だんだんと神社について不信感だけが募ってきた。

 日本の神社では、性的なものを祀っている所も多く、男性器そのものを崇めている所も珍しくない。かなり露骨な下ネタで、さすがの絹子も首を傾げる。とある神社では、男性器を模った珍宝窟に賽銭を投げるとチーンと鳴るとか……。これってどうよ……。

 そんな神社にいる神様は下ネタで喜んでいるのだろうか? だとしたら、神様というより知能レベルが小学生の悪魔って感じがする。

 神社の祭りの起源も、乱交パーティーという説があるのを見かけ、さらにガッカリとしてきた。

 極めつけは、厄年は統計的に病気になりやすいと言われているだけで、大きな根拠は無いらしいという事だった。確かに厄年の人が全員不運といえばそうでも無い。

 元々の仏教や神道は、人間の肉欲は肯定せず、慎ましいものだった。だんだんと人の欲望に合わせて変わってきたようだ。下ネタ神社は。人間の性欲の現れだと思うと、何の憧れも持てない。元々の神道はもっと清らかのものだったと思うがどうしてこうなったのだろうか……。受験の時に一生懸命祈ったりして、守りも買ったが何の効果も無かった。これって己の欲望を肯定にしたユルいカルトっぽいなと思い始めていた。

「何で厄年なんて気にしてたんだろう?」

 絹子は本を閉じ、棚に返すと図書館を後にした。
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登場人物紹介

悪魔

あやかし神社の主。人間の記憶を食い幽霊のフリ、天使、動物やイケメンのフリをして人間を騙している。ヤクザのように願いの代償を請求する。聖書の神様に敵対。

悪霊

悪魔の手先。人間の心に棲みつく実行部隊。あやかし神社では眷属のフリをしている。

聖書

悪魔と人間が結んだ契約を破棄する鍵…?

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