第3話 結婚の願い(2)
文字数 1,155文字
目の前に鬼がいた。
しかも黒髪の美しい鬼だった。イケメンと軽々しくいうのは失礼になるぐらい神々しい雰囲気がある。紺色の着流しを上品に着込んでいたが、少しも古臭い感じはしない。
肩まで伸ばし、切り揃えた黒髪はサラサラで天使の輪のようなものもできていた。そして鬼らしくツノが頭に付いていたが、不思議とコスプレ感は全くなく、頭にマッチしていた。
あまりにも神々しさで膝が砕けそうになるが、どうにか正気を保つ。
あやかし神社というのは、本当だったらしい。本当にファンタジー漫画や小説のような美しい鬼が現れてしまった。
「こんにちは、お嬢様」
鬼は意外にも優しい笑顔を見せてきた。鬼というからには、危険な存在である事は頭では理解していたが、この美しさに頭の一部が弄られているような感覚を覚えた。理性がどこかに飛んでいくのがわかる。
「では、願い事を聞いてあげよう。結婚したいんだろ? 良い人を連れてきてやるよ」
「そ、嘘……」
小さな声でそんな事しか言えない。こんな甘い展開があっていいものなの? 理性は飛びかけていたが、かろうじて冷静さは頭に残っていた。
「俺は、きっちりと契約したいからね。一応契約書を書いてもらうよ」
鬼は目を薄く閉じ、微笑むとA4サイズの紙を一枚見せてきた。
本当に契約書のようだった。鬼の名前は馬有、バアルという名前らしい。変な名前だと思ったが、あやかし風のキラキラネームだろうか。
問題は鬼の名前ではない。
契約すると、久美の金銭、健康、魂が鬼の所有物となり、願いを叶えて貰う代償にそれらのなかったから一つ奪うとある。
新たの願いが生まれた際は、契約更新として再び神社に来なければならないらしい。
「そんな、奪うだなんて。嘘だって、そんな」
契約書を見ながら、頭が混乱してきた。確かに鬼は美しいが、願いを叶えるために何かがうばわれる?
そんな事ってあるの?
そもそもこの鬼は、実在しているの?
それに鬼の所有になるってどういう事?
「願いを叶える為なら、代償ぐらいどうって事ないだろう? 結婚したいんだろう?」
鬼は久美に目線を合わせて誘惑してきた。
「そんなのは信じない!」
だんだんと怖くなってきて、久美は鬼を振り払って、一目散に逃げた。もちろん、契約書にサインなどはしていない。
一人暮らしの家に帰ると、心臓がずっとドキドキしていた。
「そんな鬼なんてリアルにいるわけ無いじゃん。夢よ、夢」
自分にそう言い聞かせた。
実際、あの神社を調べても情報は何一つ出てこなかった。住所検索をしても、空き地としか出てこない。窓をあけ、神社があった方角を見てみたが、森のようなものも何もなかった。
やっぱり夢だったんだ。婚活がうまくいかなくて疲れて幻を見ていたのに違いない。
夢だったんだ。
久美はそう結論づけた。
しかも黒髪の美しい鬼だった。イケメンと軽々しくいうのは失礼になるぐらい神々しい雰囲気がある。紺色の着流しを上品に着込んでいたが、少しも古臭い感じはしない。
肩まで伸ばし、切り揃えた黒髪はサラサラで天使の輪のようなものもできていた。そして鬼らしくツノが頭に付いていたが、不思議とコスプレ感は全くなく、頭にマッチしていた。
あまりにも神々しさで膝が砕けそうになるが、どうにか正気を保つ。
あやかし神社というのは、本当だったらしい。本当にファンタジー漫画や小説のような美しい鬼が現れてしまった。
「こんにちは、お嬢様」
鬼は意外にも優しい笑顔を見せてきた。鬼というからには、危険な存在である事は頭では理解していたが、この美しさに頭の一部が弄られているような感覚を覚えた。理性がどこかに飛んでいくのがわかる。
「では、願い事を聞いてあげよう。結婚したいんだろ? 良い人を連れてきてやるよ」
「そ、嘘……」
小さな声でそんな事しか言えない。こんな甘い展開があっていいものなの? 理性は飛びかけていたが、かろうじて冷静さは頭に残っていた。
「俺は、きっちりと契約したいからね。一応契約書を書いてもらうよ」
鬼は目を薄く閉じ、微笑むとA4サイズの紙を一枚見せてきた。
本当に契約書のようだった。鬼の名前は馬有、バアルという名前らしい。変な名前だと思ったが、あやかし風のキラキラネームだろうか。
問題は鬼の名前ではない。
契約すると、久美の金銭、健康、魂が鬼の所有物となり、願いを叶えて貰う代償にそれらのなかったから一つ奪うとある。
新たの願いが生まれた際は、契約更新として再び神社に来なければならないらしい。
「そんな、奪うだなんて。嘘だって、そんな」
契約書を見ながら、頭が混乱してきた。確かに鬼は美しいが、願いを叶えるために何かがうばわれる?
そんな事ってあるの?
そもそもこの鬼は、実在しているの?
それに鬼の所有になるってどういう事?
「願いを叶える為なら、代償ぐらいどうって事ないだろう? 結婚したいんだろう?」
鬼は久美に目線を合わせて誘惑してきた。
「そんなのは信じない!」
だんだんと怖くなってきて、久美は鬼を振り払って、一目散に逃げた。もちろん、契約書にサインなどはしていない。
一人暮らしの家に帰ると、心臓がずっとドキドキしていた。
「そんな鬼なんてリアルにいるわけ無いじゃん。夢よ、夢」
自分にそう言い聞かせた。
実際、あの神社を調べても情報は何一つ出てこなかった。住所検索をしても、空き地としか出てこない。窓をあけ、神社があった方角を見てみたが、森のようなものも何もなかった。
やっぱり夢だったんだ。婚活がうまくいかなくて疲れて幻を見ていたのに違いない。
夢だったんだ。
久美はそう結論づけた。
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